第17話

「や、めて…っ」


高そうなスーツを着こなしたイケメンが俺の粗末な息子を綺麗な口で頬張っている光景は眩暈を覚えた。これは夢だ。夢であってくれ。酔った頭が余計にぐらぐらと揺れる気がした。


「ひもひいいか?」

「ちょ…っ、んなとこで喋らない…で…んあぁんっ」


俺の情けない喘ぎ声に気をよくしたのか、彼はにやりと笑って、より一層深く咥えると俺の乳首まで空いている手で弄りだしたのだ。なんでこの人は仕事だけじゃなくこういったことも器用なんだろうか。そういうとこで完璧にならんでもいいと思う。


「んっ…そこばっか、やだ…っ!あっ」


嫌だというのはもはやこいつは聞いちゃいないのだ。裏筋を赤い舌で舐め上げると同時に袋もやわやわと揉みしだいて俺をどんどんと追い込んでいく。時折爪先で乳首を弾かれるともう達してしまいそうだった。生理的な涙がじわり、滲んできて俺の視界をうっすらとぼやけさせる。こんな辱めはもう耐えられない。これからも仕事で会うってのに、こんなのってない。

俺の様子がおかしいと気付いたのか、エロ社長は咥えるのを一旦やめると、俺の涙をきれいな指ですくった。


「う…っ、うああん…」

「おい…マジ泣きか…?そんなに嫌だったのかよ…」

「う…っ、ばかぁ…こんな…こんなこと…意識しっかりしてるうちに…されたら…、恥ずかしくて…顔…合わせらんない…っ、うう…」


前はもっとべろべろに酔っ払っていたから…いや、だからといって言いわけはないし、それは犯していい理由には全くもってなるはずはないのだが。今は酔っているとはいえ意識はあるし、まして俺はこの男と無関係というわけではなくなってしまったのだ。その上でこの仕打ちはあまりにつらい。俺は正直な気持ちを彼に吐露した。それでやめてくれるのならば、恥ずかしいことでも多少は我慢する。代償なくては成果は得られないのだ。

だが予想に反して田宮は意外な反応をしたのだ。


「…おま…おまえ…、」

「ん?んぁっ!や、やだぁ…っ!あっ、」


目を見開いて津島を見つめるなり、彼はさっきよりも確実な刺激を津島のイチモツに与え、乳首を吸い始めたのだ。彼の長い指で上下にしごかれる刺激に俺が敵うはずもなく。


「なあ、イくときの顔、ちゃんと見せて?」

「や、やだ…だめだめだめ、そんなにしたら、やあ、ああっ!」


ぐりっと親指の爪先で尿道口に刺激を与え、乳首を甘く噛まれてしまった瞬間、俺はあっさりと精を吐き出した。2,3回に分けて吐き出される欲の塊を、俺はぼーっとした頭で見つめていた。

や、やってしまった。男に手コキされて乳首をいじられながらイってしまった。終わった。俺の中の大切なものをまたも失ってしまった。もういろんな感情がごちゃ混ぜになって、思わず手で顔を覆う。自分の雄の臭いがツンと鼻先を掠めて更に羞恥心が高まっていく。


「…だめだめだめーって…あのなあ、…反則過ぎんだろって…どんだけ可愛いんだ…お前…あーっくそ!」

「…なにいってんだよ…あんたなんか、しねしねしんじゃえ…」

「…あー萌え?って感情ってこういう感じなのか?なんとなく分かったかも」

「何を言ってるのかさっぱり」


目の前の男は俺を凝視したままティッシュで俺の腹に散らばった白濁をいとおしそうに拭った。

言っていることは理解に苦しむものばかりだが。そしてズボンの中で窮屈そうにしている奴の恐らく凶悪なモノは見ないふりをしよう。絶対に触れてはいけない、あれだけは。

もう恥ずかしさやら酔いの気持ち悪さやら、感じてしまった情けなさとか射精後の独特の倦怠感がどっと一気に押し寄せて、俺はゆっくりと意識が遠のいていくのが分かった。

あれ、これってなんかまたデジャヴ、なのか?


「お、おい!!凛太朗!」


焦ったような、どこか残念そうな変態の声を遠くに聴きながしながら、俺はすとんと意識が抜け落ちたのだった。

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