第79話 真夜中の性教育

「あのなあシェリル、別に女子校生全員が経験済みってわけじゃないんだぞ」


「そうなのか? ではカリンはまだしていないのか?」


「えっ!? 詳しくは知らないけど、そりゃまだなんじゃないか……?」


「そうなのか。てっきりわたしはアラタと済ませているのかと」


「うおおおおおい!! と、とんでもないこと言うんじゃねーよ!!」


 いきなりのことで、俺は顔がカアッと熱くなるのを感じた。

 つーかさ、俺が花梨とだなんて……いろいろとあり得ないから!


「あのなあ、その……エッチっていうのは、お互いが好きになってからするものなんだよ。一般的にはHのあとにIじゃなくて、Iが生まれたあとにHなんだ」


「そうなのか。伝承とはずいぶんと違うのだな」


「伝承!? ABCの歌、そっちの世界では伝承扱いなの!?」


「自然と勉強が身につく素晴らしい歌だからな。称えて当然だと思うが」


 いや、実際勉強にはなるんだけど、それにしてもなあ。

 こっちの世界の常識を、変にエロと結びつけて解釈しないでほしいなあ。


「なるほど。互いが愛し合ってこそ、本番にいたるというのだな。それでアラタ、本番というものは、いったいどういう行為をすることなのだ?」


「――はっ? おいシェリル、それ何の冗談だよ」


「すまない。実は本番がどういうものなのか、はっきりとは知らないのだ」


 え……っ? 俺は耳を疑った。

 いやいや、だってあれだけ下ネタ言ってるんだぞ。

 それなのに知らないとか、どんだけ耳年増なんだっつーの。


「エロビデオとか見たことないのか?」


「いや、こちらの世界だと動画は手に入れるのが困難でな」


「エロ画像は? それに官能小説だってそういう描写があっただろ?」


「モロにしているところの画像は見たことがないな。小説の描写は遠回しなことが多くて、何をしているのかが今いちわかりにくい。魔力を上昇させるために、全文暗記、暗唱などはしたことがあるのだが……」


「じゃあ、両親や先生は教えてくれなかったのか?」


「オトナになれば自然にわかると教わったぞ」


 こ、こいつ……! 性の知識が偏りすぎだろ……!!

 全部知ってる上で、下ネタを言ってるんだと思ってたのに。

 覚え立てのエロワード連呼してる小学生男子よりもタチが悪いぞ!!




「なあアラタ、本番とは何をどうするものなのだ?」


「そ、それを俺に聞くのか……!!」


「頼む、教えてくれ。他に聞ける者がいないのだ」


 シェリルが上目づかいの潤んだ瞳で、お願いしてくる。

 どうせなら、もっと違ったことでお願いされたかったなー。


「……仕方ないな。実はな――」


 俺は包み隠さず、性の真実をすべてシェリルに話した。


「――と、いうわけなんだ」


「またまた、アラタは冗談が下手だな。そんな大きなものが、あんな小さな場所にはいるわけがないだろう。わたしにだってそれくらいはわかるぞ、はははっ」



 その結果…………信じてもらえなかった。

 ちくしょおおおおおおおっ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る