休息①
第66話 収入
クエストを無事終えた俺たちは、ギルドで10000ペロを手に入れた。
半分の5000ペロはパーティ共有の生活費にすることが決まり、残りを4人で分けて1人あたり1250ペロの収入となった。
もうすぐ夕方。
俺たちはこれで今日の冒険を終了することにした。
街で宿をとるかという話になったが、それでは余計な出費がかさんでしまう。
そこで俺たちは、一緒に転生してきた自宅に帰ることにした。
「よかったなアラタ、これならそれなりの剣が買えるぞ」
「おお、1250ってそのくらいの価格なのか! なら帰りに買っていこうかな」
「お兄ちゃん、せっかくだしお夕飯の材料も買っていきたい!」
「じゃあいったん別行動にして、街の入口に集合しましょうか」
ということで、俺は1人で武器屋に向かった。
ちなみに女子3人は、みんな一緒に食材を見に行っている。
料理好きな花梨や菜々芽は、異世界の食べ物にとても興味津々だった。
でも今まで魔法の勉強ばかりで料理をしたことがないらしいシェリルは、てっきりこっちに来るのかと思ったんだけどな。……何でだろう。
「らっしゃーい。兄ちゃん、何かお探しかい?」
「えっと、1000ペロ程度で買える剣が欲しいんだけど」
「なるほど。それならこいつはどうだい?」
武器屋の主人が一振りの剣を持ってくる。
見た目ごく普通の剣だ。鑑定のフレーバーにも【初心者用の扱いやすい剣】と書かれている。1200ペロという価格の割には、攻撃力もそこそこなようだ。
「その手を見れば、あんたが剣を持ち慣れていないことはわかる。これにしときな」
「ありがとう。ちょっと持ってみていいかな」
「ほらよ」
「――っ!? ぐあああああああっ!!」
俺はその剣を手にした瞬間、大声で叫んでいた。
「こ、これは……!! おまえさん、何ということだ……!!」
武器屋の主人も驚きのあまり声を上げている。
「まさか、この剣が持ち上げられない非力なヤツがいるなんて……!!」
…………そう。
剣が重くて、俺は片手では持ち上げられなかったのだ!
両手で思いっきり力をこめて、やっと構えられる程度だった。
これを振るなんてとんでもない! 剣ってこんなに重いのかよ!!
「あの……もうちょっと軽い剣ってないんですかね?」
「馬鹿言うな。これより軽いなら、もうこれしかないな」
店主が持ってきたのは、頑丈そうな棍棒だった。
ボーリングのピンを長めにしたような形状で、金属のトゲトゲがついている。
持たせてもらったところ、確かに軽い。これなら素振りもできる。
でも、棍棒だなんて……。
ちくしょー! 剣が装備してえよ!!
魔法剣ならラクラク扱えたから、普通の剣だって平気だと思ってたのに!
でもあの魔法剣、確かにバイブの重さしかないんだよなあ。
くそー! 今まで俺がやってきたロープレの中では、どんなヘボい剣士だって剣くらい装備できてたっていうのに、俺はそれ以下だって言うのかよー!!
「……どうする?」
「じゃあ、棍棒ください」
「まいどあり。……元気出せよ」
俺はしょんぼりしながら店を出た。
武器屋の主人、心から同情してくれてたなあ。
みんなに何て話そうか。きっと花梨には笑われて、菜々芽には励まされるんだろうなあ。くぅ~、情けねえ! シェリルには、そうだな「さすがはアラタ、男根の棒を買ったのだな」とか言ってからかわれるかもな。
棍棒の代金は250ペロ。余った金で防具でも買うか……?
そうすれば、多少なりとも見栄えはよくなるだろうし。
あれこれ悩みながら、俺はさっきのアクセサリー屋に通りかかった。
花梨と菜々芽が立ちよっていた、ネコ耳やうさ耳が売っていた店だ。
「らっしゃっせー!」
うるせえ! もうその魔法には引っかからないからな!!
――って、あれ……。
俺の目は、いったんそこで止まってしまう。
そこに陳列されている、とある1000ペロの商品に目が行っていた。
手元にある代金は、ちょうど1000ペロだけど……。
そのあと俺は、街の入口でみんなと合流した。
結局のところ、購入した俺の装備は棍棒だけ。
理由を正直に話したら、予想通り花梨には笑われて、菜々芽には励まされた。
シェリルには……何も言われなかった。
あれ? てっきり下ネタ言うと思ってたのに。
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