第36話 回復アイテム

【 アラタ  HP 1  MP 0 】


 何だこのHP!

 やべぇよやべぇよ。シャーペンでつつかれただけで死んじまうよ!!

 まだ街まで距離あるんだぞ。どうする……そうだ! こういうときは回復だ!!


「頼むシェリル、俺に回復魔法をかけてくれ!」


「いや、その……申しわけないのだが、わたしは回復魔法が使えないのだ」


「は!? お前巫女なんだろ!?」


「どちらかと言うと、わたしは癒し担当ではなくイヤらしい担当だ」


「何でドヤ顔!? お前どちらかっつーか全力でイヤらしいからな!!」


「そこまでわたしのことを……。嬉しいぞ、アラタ」


「ほほを染めんな! 褒めてねえんだよ!」


 ったく、こりゃシェリルには期待できないな……。

 それにしても、もしまたモンスターが襲ってきたらどうするんだよ。

 大概の敵ならシェリルや花梨に任せておけば問題ないだろうが、もし不意打ちとか食らったら一発でアウトだぞ。


 しかし次のシェリルの一言は、まさに俺を救う天使の声だった。


「安心しろアラタ。こんなときのために、回復アイテムを用意してある」


 おおおおーっ!! そうだよ、すっかり忘れてた!!

 ゲームっぽい世界なら、こういうアイテムは基本だよな!!

 やくそうとかポーションとか果物味のグミとか、手軽に回復できるヤツ!!


「とくと見よ。これが回復アイテム――ポーションだ!」


 シェリルは服の中に手を突っこむと、1本のボトルを取り出した。

 大きさは1リットルは入りそうなくらい。……どこにしまってあったんだ?

 いやまあ、でも今はそれよりも、もっと気になることがあってさ。


 そのボトルにはラベルが貼ってあって、ぺぺローションと書かれていた。


 …………。

 …………・…………。


 ポーションじゃなくて、ローション。


 大人のお風呂屋さんで使われる、ヌルヌルで気持ちよさそうなアレだ。


「さあアラタ、これを使え!」


「これを……俺が使うのか?」


「何か不服か? ……ああ、ティアラプロの方がよかったか?」


「ブランドの問題じゃねーから!!」


「……そういうことか。わたしとしたことが、ついすっかり失念していた。すまない、お湯は持っていないのだ」


「薄めたいわけでもねーんだよ!!」



 確かに原液じゃなくて、薄めた方が使いやすいけどさあ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る