第16話 しらべる

『ではアラタメナナメ、あなたは異世界への転生を希望しますか?』

『はい! あたし、お兄ちゃんと一緒がいい! お兄ちゃんと生きたい!』

『――え? ……最後の言葉、もう一度お願いします』

『お兄ちゃんといきたい! 一緒にいきたいんです!』

『イキたい……? お兄ちゃんと……? も、もう一度言ってください!』

『お兄ちゃんと一緒にいきたい!』

『悲壮な感じでワンスモア、プリーズ!』

『あたし……お兄ちゃんと一緒にいきたいの』

『ハァハァっ、よくわかりました。ごほうびに家ごと転生させてあげましょう』

『わあい、女神さま大好き! ところで鼻血出てるけどだいじょうぶ?』




 以上が、菜々芽が転生したときのやり取りだったのだという。


 おのれ……、あのクソ女神め。

 人の妹に、何度も何度も何てこと言わせてんだ!

 たぶん女神のやつ、ひしゃげたスライムのように、とろけきった表情してただろうな。もし菜々芽が悪い子になったら、お前のせいだからな!


「それよりも、シェリルはさっきから何やっているんだ?」

「うーん、何だろうね。お兄ちゃん」


 俺と菜々芽がこれまでの経緯を確認しあっている間、シェリルは不審な行動をとっていた。俺の部屋が珍しいのか、さっきからずっとうろうろしている。

 そして今は押し入れに頭を突っこんで、何かを探しているようだった。

 四つん這いの姿勢になって、俺たちの方にお尻を向けてふりふりしている。


 うーん、二重の意味でツッコミ待ちと言ったところか。

 ……っていかんいかん、俺としたことがつい下ネタを考えてしまった。



「なあシェリル、そこでいったい何してるんだ?」


「物色だ。誰かの家に来たらタンスやツボをあさる。これぞ冒険者の基本だからな」


 あーなるほど。そういうことか。旅の準備には必要なのだろう。

 でも俺の部屋なんかに、冒険の役に立つものなんてないと思うけど。


「お兄ちゃん、やめさせなくていいの?」


「いいんだ菜々芽。これはロープレあるあるだから」


 よくゲーム内では、村人の家をあさるとアイテムやら武器やら、思わぬ宝が手に入って嬉しかったりするものだ。普通なら犯罪になるところだが、ここは異世界。この世界ではこれが常識なのかもしれない。

 そう考えると、いきなり怒るのはよくないような気がした。


「――あ、あったぞ。エロDVDだ!」


「バッカヤロおおぉっ!! 何てもの見つけてんだああああーっ!!」



 さっそく怒ってしまう俺だった。

 でもこれは……怒ってもいいよな?

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