異世界に転生しても俺は孤独なままだった

伊豆 可未名

プロローグ

 俺は今、屋上にいる。本来なら立ち入りを禁止されている屋上に一人で立っている。フェンスを乗り越えて外側に出ると、風を感じる。穏やかな風だ。俺は最期の思い出にと、深く息を吸い込む。

 もう、今の生活には耐えられなかった。学校に来ると、自分の下駄箱にゴミが入れられている。机にしまっていた教科書は落書きがされたり、破られたり、隠されたりしている。いつも誰かが俺の陰口を言っている。誰も俺と目を合わせようとしない。

 俺は、今から屋上を飛び降りる。この孤独な生活から抜け出す。俺がどうして自殺なんてことをしたのかを沢山の人が後で知ることになるだろう。フェンスの内側には、誰かに汚された上履きと遺書が置いてある。

 真下には部活中の生徒達がいる。その中には俺のクラスメイトもいる。誰も俺に気付いてなんかいない。俺がこれから死のうとしているのに、誰もそのことに気が付いたりしない。

 それでいいさ、と俺は心の中で呟く。そして、足を空中に投げ出す。

 あっという間に俺は逆さまになって頭から地上に落っこちた。その瞬間に意識が吹き飛んだ。死ぬ時はこんなに清々しいものなのかと思うほど、あっさりとした最期だった。俺は痛みも苦しみも感じることなく、生涯を終えた。

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