愛される理由

ひょん

第1話

幼稚園のお迎えの時間から30分程過ぎた頃、雅彦はパンクした自転車を走って押しながら園内に駆け込んだ。


「すいませーん!自転車は園内に乗り入れないで下さい!」


門の近くに立っていた先生に注意されて、慌てて門の外まで戻り、自転車を置いて小走りに園舎に入って来た。


息子の裕太が、先生と手を繋いで立って居た。


「先生すいません!おお、裕太ゴメン!自転車がパンクしちゃって。」

「パパ、またあの道行ったんでしょ。」


家から幼稚園に来るまでの道で、建設材料を積んでおいてある敷地があり、そこを通り抜けると多少のショーカットになる。しかし、釘やら針金やらが落ちていて、これまでも何度か通ってパンクしている。


「ダメって言ったのにー!」

「ごめんごめん。急いでたから。先生すいません。」


雅彦が遅れるのはしょっちゅうである。うたた寝して寝坊。途中でこけた。忘れモノを取りに帰った。道を間違えた。理由は色とりどりだ。


先生は呆れ顔で、「今度は時間通りお願いします。」と一応は言うがまるっきり期待していない。


「裕太くん、じゃあまた明日ね。」

「先生、ごめんね。よく言っとくから!」


幼稚園児の息子に言われつつ、雅彦は先生に向かって何度も頭を下げながら、幼稚園を後にするまでに2回つまずいた。


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