なんかいろいろ

改行・空行について

 Twitterで知り合いに聞きたいことはないか問いかけてみたら、改行をどこですればいいのかわからない。それについて書いてくれと頼まれました。

 この手の話は割とありがちです。

 特にweb小説と紙の本とでは全くフォーマットが違います。

 ですので、縦書き基準に考えるか横書き基準で考えるか、そもそも書式によって最適解が変わってきたり……と考えていくとキリがないお話でもあります。

 それに一定の解釈を与えることは容易いのですが、実は筆者自身がこれについては確たる結論を出せていません。

 というより筆者の自論が読者受けしないことを知っているので、しぶしぶ読者受けするように四苦八苦の試行錯誤をしているところなのです。

 今回はとりあえずのところとして一般的、あるいは基本的な改行・空行についてお話しますが、よりよい方法が存在するだろうことは理解しておいてください。


 というわけでそもそも改行・空行とはなんぞやという話から入りましょうか。

 この文章の少し上に空白の行がありますね。これが空行です。

 そして、文頭の文字が一つ下がっている文章があります。これが、改行の次の行の文章です。

 基本的に改行・空行の次の文頭の文字は一つ下げるのが決まりとなっています。これはみなさん小学生の頃に作文の書き方でも習ったのでは?

 ぶっちゃけると、改行・空行に関して変わることのない基本的なお約束はこれだけです。あとは作者さんの裁量に任せられていると言っていいです。


 そして、改行・空行が齎す効果についても触れておきましょう。

 改行・空行があると、文章の読みやすさが上がります。文字の詰まりが解消されてスペースができることで、ゆったりと一文一文を眺められるようになるわけですね。

 ついでに以下で説明することですが、改行・空行によって区切りを示すことができます。話と話の間がわかりやすくなるので読者にお話を伝えやすくなります。


 ですが、残念なことに改行・空行は多用すればいいというものでもありません。

 携帯小説やweb小説、特になろう系の小説では空行を多用する形式の小説も少なくありません。

 なぜなら純粋に読みやすいからです。軽い物語を求める層が増えた現代において、それらの小説はテンプレ化してきた技法を使っているだけなのです。

 確かに軽い物語を展開するならば文章の見た目の軽量化は一見得に見えるかもしれません。しかし、それはすかすかの地の文の少ない会話文主体の話だからこそ成立する技法です。

 結局どんなに会話文主体のweb小説だろうと出版するにあたって大幅に地の文を加筆修正するのですから、最初から地の文を上手く使い、それらをうまい改行や空行で読者に提示したほうが編集者さんからの受けも段違いにいいのはわかりますよね?

 改行・空行には適度な量というものが存在するのです。みなさんにはそれを理解していただきたい。


 というわけで、なんの指標も示さないのではこの話の意味がありませんから、ここからは一般論と自論を説明させていただきます。

 一般論から言います。まずは改行・空行にまつわる用語の説明です。

 空行から空行までの間の文章すべてで大段落、パラグラフと呼ばれるものになります。

 改行と改行の間は小段落と言われますね。

 大段落を意味段落、小段落を形式段落と呼ぶこともあります。

 そして、小段落は一つの話題で、大段落はいくつかの話題を包括するテーマで括るのが妥当でしょう。

 つまり、朝ごはんを食べるという大段落の中に、ご飯を食べ味噌汁を飲み玉子焼を囓るという小段落が配置されるわけです。もしかしたらその料理を作ってくれた人の描写や、一緒に食べている人についての小段落もあるかもしれません。


 次の話です。小説の一話一話というものは大段落の集まりで出来ています。

 例えば朝起きて学校に行くために家を出るまでを一話としましょう。

 朝起きて部屋を出るという大段落、身支度を整えるという大段落、朝ごはんを食べる大段落、食べ終わって家を出るという大段落。

 この4つの大段落から一つのお話が出来るわけです。

 これらの大段落の中にはいくつかの小段落が設定されているのは想像がつくでしょう? 身支度一つとっても、顔を洗い歯を磨き髪を整えるのですから。

 つまり、大きな枠組みの中に小さな複数の要素がある。というのが小説の基本的な考え方なわけです。

 これは後々語ることになるであろう起承転結や序破急の話にも繋がってきます。章組みなんかもこの考え方を流用するとしっくりくると思いますよ。


 さて、少し話は逸れましたが改行をどこでするかという話でしたね。

 上の話を理解して頂ければ自ずとわかってくるとは思うのですが、一つの話題が終わった時に改行するのが一番自然です。

 空行ならば、それらの話題が纏まってもう一つ大きな括りが出来た時に入れるのがいいでしょう。

 このお話の書式を見てもらえるとわかると思いますが、きちんとその規則に則って空行と改行を入れていますよね? これが自然ということです。


 さぁ、ここまでが一般論についてでした。

 そして、ここからは自論になります。

 しかし、正直言うとここから先は蛇足でしかありません。

 今までに説明したことは、守るだけで批判されることはなくなりますし、きちんとした構成ができていると褒める人だって出るかもしれないくらいには、基礎でありながら出来ている人が少ない事柄だからです。

 なので聞く必要はありません。少々過激な意見ですし。


 その上で自論を言わせてもらうならば、空行というものは場面転換以外に使うべきではありません。改行は大段落の区切りに使うべきです。

 コイツは何を言っているんだ? お前の作品でそんなことをやってないじゃないか! って言いたい読者さんは数多いでしょう。もっともです。

 実際拙作、真譚・妖怪小町においてはそういう書き方をしていません。しかし、ハーメルンのフォーマットから修正を全く加えていない他の短編なんかはこの自論に基づいた改行・空行の入れ方をしています。

 読者視点に立つとぶっちゃけめちゃくちゃ読みづらいです。

 ですが、巷では活字狂いと揶揄されることもある筆者からすると、そのくらい文字が詰まっていたほうが気持ちのいい文章なのです。

 びっしりと埋まりながらもある程度の節度を守った力ある文章。筆者はそういうものが大好きですので、自然とそういう書き方をしてしまうのですよね。

 ちなみに、最近は読者のことを考えて一般論に基づいたごくごく普通の改行・空行を入れているのでご安心ください。今後の投稿もこのままで行くつもりです。


 というわけで自論でした。

 正直真似して損をしても責任は取りませんから一般論の方を参考にしましょうね。


 以上、改行・空行、そして段落について語ってみましたがいかがだったでしょうか? 基本的なことですが、これを守るだけで作品の読みやすさと伝わりやすさがぐーんと上がると思いますよ。

 作者の独りよがりではなく、読者のことを考えるならばリーダビリティは重要です。画面の向こうのあなたの読者のためにも、一工夫加えてみてはいかがですか?



 ちなみに次回更新はルビについてです。

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