第41話 ~素直に~

 光は、やがて治まる。



 樹木の根から伸びる町並み。


 一つ一つの色鮮やかな命が輝きを増して蘇っていた。


 小さな希望が数々の場所へと集まった、惑星プルトー。

 聖なる力によって、闇は消え去った。


 聖なる樹木は、光を取り戻し、希望の光で満ち溢れていた。




 アイカは光り輝く世界を目の当たりにして、感動していた。


「アイカさん、ありがとうございました」


 ミラはアイカから優しく手を離すと、深々と頭を下げた。


「え、え!!? ううん、ううんそんな全然!」

「いいえ、皆さんもですし、アイカさんがここに来てくださったお陰で、プルトーは救われたのです」


『ミラ、私は嬉しい』


「ええ……私も、嬉しいです」


 ミラはプルトーにそびえ立つ樹木を見て微笑んだ。



「皆様に、報酬を……」


『そうだね』


 一人ひとりの戦士たちに小さな光が訪れ、体内に入って行く。


 そして体中、漲るものを感じ、喜ぶ声が次々と上がりだす。


「何が起きてるの……?」


 アイカは不思議そうに戦士たちを眺める。


「この光達は、奇跡の水の結晶なんです」

「結晶……? 綺麗……」


 リーナは雪が舞うように漂うあたたかい光を眺める。


「この結晶達は、闇を綺麗にしてくれます」

「え……?」

「アイカさんの願い、樹木も分かっています……。是非、行ってあげてください」


 ミラが微笑むと、アイカは弾かれたように彼を見た。



 ライト――――!




・・・


 サナとケイは光を見て感動のあまり立ち尽くしていた。

 樹木に触れていた手元が温かくなり、安心してサナが触れていた手を離そうとした時だった。


「綺麗……」

「ああ……」



 その力は奇跡の力――。


 ライトの左目が、治る――。


 手伝いを――。


 サナの頭に突如声が響いた。


「え……?」

「どうした、サナ」

「わ、分かんない。声がした……。ケイ兄、ちょっと、ライトお兄ちゃん探してくる!」

「お、おう! って、サナ、同じチームだから通信機頼りに探すぞ!」


 ケイは慌てて走っていくサナを追った。


・・・


 ライトは、輝く結晶達を静かに眺めながら左目を押さえ、立っていた。ライトの元へ、アイカが駆けて来た。


「ライト!」

「……アイカ……! なぁ、俺の左目、今どうなってる?」

「え……?」


 ライトが押さえている指と指の間から、眼帯をもすり抜けた光が漏れ出している。


「光が……溢れてる……」


 アイカは、輝く光を見て、ライトに希望を持って伝えた。



 ルナシスメンバーも、光をうっとりとした表情で眺めていた。


 マイキーは、瞳を閉じて、ライトの瞳の回復を祈った。

 すると。


 ライトの左目は治る――。


 創り物が、本物になる――。


 マイキーの頭に突如声が響いた。



「ライト!!!」

「な、なにマイキー、大きな声だして、びっくりした」

「リーナ! 俺の頭の中で、声がした。俺の創ったのが、役に立てるかもしれない!」


 マイキーが通信機から小さな球体のクリスタルを取り出し、ぎゅっと握りしめた。


「えっ? 何、何なのっ!?」


 マイキーの喜び様についていけないまま、リーナは戸惑っている。そんなリーナを置いて、マイキーは喜々としてライトの元へ駆けて行くのだった。


「なっ、なぁライト! こ、これ……!」

「マイキー、どうした?」


 マイキーの手には虹色に光り輝く球体の物が。


「それは……?」

「これ……アイカちゃんが倒したタランチュグラから出たクリスタルで作ったやつ……ライトの目になって欲しいって思って創った……」

「義眼……か?」


 クリスタルで出来たその小さな球体は、プルトーの樹木から生まれた光に包まれていた。

 マイキーはライトの手を取ると、小さな球体を渡す。


「マイキー、ありがとう……」


 どうやったら、付けられるんだろうなと笑顔を見せると、マイキーはわからないと首を振る。希望を込めて作ったからわからないと言葉を続けた。


 ライトがマイキーから受け取った小さな球体を優しく握る。


「ライトお兄ちゃん、あたしも手伝う!」


 サナが嬉しそうにライトの元へ。


「ライトお兄ちゃんの左目が、見えるようになりますように――!」

「俺も、お前の目が見える事、願ってたぜ」


 サナとケイはライトが持つ小さな球体に触れ、呼吸をする。


 すると、鮮やかな新緑のエネルギーが小さな球体へと入り込んだ。


「……! サナちゃん、ケイ……」

「皆、ライトお兄ちゃんのことを助けたかったんだね」


 凄いね、とサナは微笑んだ。


「サナちゃん……」



「ライトさん、願って下さい」


 声がする方を見ると、ミラが凛とした声で言っていた。


「……ああ」


 ライトは左目の眼帯を取ると、そこには左目の傷が光っていて、小さな球体と共鳴するように輝いていた。


「もう……弱い自分が嫌だなんて言わねぇ。仲間を、精一杯守れるようになればいい」


 その言葉に、そうだよと頷くリーナ。ライトは言葉を続けた。


「左目が治って、またルナシスの奴らと一緒に居たい。そして、俺は――」


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