第20話 旅立ち ① ~第一部・完~

 クリエイト室からメンバー達が出た時だ。

 リーナがアイカの手を握り、それにびっくりしてアイカはリーナを見る。


「アイカ、ちょっとライトの所に行ってあげてくれる? あたし達、先に待ってるから」

「あ、うん……ありがと、リーナ」


 アイカは頷くと、そのまま医療室へと向かう。医療室は、今から向かう司令室とは真逆の場所だった。



 ライト、大丈夫――!?

 

 ライト――!


 無我夢中で走っていると、医療室から扉が開き、今まさに会いたかったライトの姿が。


「ライト――! 大丈夫……!?」


 走っていた足が、ライトの表情を見て、自然と速度を失った。


 回復しているはずだと思いたかった。シードラゴン戦後の苦痛の叫びを上げたライトの様子は、リーナが慌てる様子からも見て、只事ではない気はしていた。今、ライトの左目には、沢山の文字がかかれた御札のような、それがデザインと言っていいのか、そんな模様をした眼帯をはめていた。


「アイカ……。わざわざ走ってきたのか、心配……させてワリィな」


 ライトはアイカの頭に手を優しく置く。今の状況のライトは間違っても好調ではないはずだ。それにも関わらず、優しい対応をするライトが切なかった。


「し、心配だったんだもの!」


 アイカは思わず出てしまった大きい声にはっとなり、口元に手を当てる。


「そっか、ありがとな」


 ライトは苦笑してアイカの頭から手を離す。

 手が離れていく時、アイカの気持ちは何故か、離れてほしくないと、とても切なく感じていた。


「ほら、招集掛かったんだろ? 俺の通信機にも入ってたから行くとこだったんだよ。行こうぜ」


「うん……!」


 アイカが歩き出すと、ライトも一緒に歩き出す。そんなライトに、温かい気持ちと、怪我に対する切ない気持ちが織り交ざっていた。



・・・



 ルナシス艦の司令室にチーム・ルナシスは集合していた。

 ここで、ライトとケイ、そして姿が変わったユララムとは初めて顔合わせをすることになった。


「う、え!? お前が、ユララム!? 若返り方半端ねぇな……!!」


 ライトはユララムの若返り様に驚くばかりだ。


「そんな、若返りって言われると……!」

「はっはは。だけどまぁ、こんな若いんじゃ、やることも若いよな」

「うぅ……すみません……」


「マジ、コイツが迷惑かけちまってすまなかった!」


 ケイは二人の会話に割って入り、そしてユララムの頭を掴んだかと思うと、思い切り頭を下げさせる。


「痛い、痛いですって! ケイ!!」


「ん? それより、お前その目……」

「あ、これな。ちょっとヘマしちまって、さ」


 ライトがケイから視線を外そうとすると、ケイはライトに更に近づくと、御札に書かれた特殊な模様の眼帯をまじまじと見つめた。


「な、なんだよ……」

「いや……ちょっと気になってさ」


「あーもー、男性同士近い、離れる! ユララムはあたしのトコに立って」

「はいっ!」


 ルミナはユララムが慌てて隣に並ぶのを見た後、間に入ってケイを睨むように上目遣いの視線を向けた。


「おっと、ワリィ」


「ライト、本当その目大丈夫?」

「そうよ! あたし本気で心配だったんだから!」


 マイキーとリーナもケイに負けじとライトに近づき、ライトは苦笑して、分かったと手で制す。


「はぁいはいはい、皆一旦落ち着いて」


 ルミナの一言に、それぞれがルミナの前に自然と一列に並ぶ。


「まったくほんっとう、今回は荒波だったわー……。やっぱりあなた、偽りの姿をしてたのね、ユララム」


 ルミナがケイとライトから離れると腕を組み、首をもたげて大きくため息をついている。ルミナの隣には、青年の姿となったユララムが立ち、頭を下げる。


「すみませんでした……」


 ユララムはチームメンバーへ頭をさげ、その姿を見たリーナが「いい光景ね」とニヤニヤとしていた。そんなリーナに対して「ちょっと!」とアイカが顔を引きつらせる。


「ユララム、あなたがチーム・ルナシス、そしてチーム・クラウドにしてしまったことは本当にいけないことよ」

「はい……ごめんなさい」

「よって、しばらくはルナシスの一員として、頑張るように!」

「……えっ!? あの俺、ここに居て……いいんですか?」

「ユララム。無断で逃げたらどこまでも追うわよ?」

「うわ」

 

 思わずたじろくユララムに、ルミナは笑った。


「ま、これも何かの縁なんでしょうね。あらためてよろしく、ユララム。活躍、期待してるわ」

「は、はい……! よろしくおねがいします……」


「声が小せぇ!!」


 仁王立ちをしていたケイが一喝する。


「はい!! よっ、よろしくおねがいしますっ!!」


 ユララムが慌てて言い直す姿に、うん、うんと頷くケイだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る