~チェイス~ ②


 “チームクラウドより1名の訪問者です”


 ルナシス艦内、艦長席へと響く音声と共にモニターに、新しい画面がルミナの視界をほぼ埋めるようにアップで開かれた。ルミナはアップされた画面の文字を見た後声を発する。


「承認するわ」


 ルミナは転送装置の蒼い電子エネルギーの後に現れた、高身長である男性を見上げた。


「ワリィな、ルミナ」

「いいのよ。まさか、またあなたが来る日が訪れるなんてね、ケイ」


 ケイはチーム・クラウドのエースだ。ゴッ、ゴッと、足音を響かせてルミナの元へと歩いていくケイ。


「おう……なんか、すまねぇな」


 ケイがルミナの頬に触れる。


「別にいいわ……ってそれどころじゃないでしょ? 早くクリエイト室に行ってあげて」


 紅くなった頬を少し膨らませたルミナは男性の手に自身の手を重ね、軽く握ると、自身の頬から離していった。


「へいへい、また話そうぜルミナ」


 ケイは名残惜しそうにルミナの肩に手を置いた後、目的の場所へと駆けて行った。


「ホント、たくましくなったわね。ケイ――」


 ルミナは駆けていくケイの背中を懐かしくも、けれどそれ以上に温かい気持ちがこみ上げてくるものを感じつつ、見つめていた。


・・・


 クリエイト室はマイキー、リーナがユララムの空間移動からの攻撃により体力を確実に奪われ、地に伏せてしまっていた。


 どうしよう、どうしたらユララムさんに追いつける!?


 アイカは仲間の状況を目にすると焦らずには居られなくなり、唇を噛む。


「無駄だっての。俺に追いつけるわけない」


 空間から発せられる、相変わらず不気味に感じるユララムの声。


「今度はこっちから行くぜ!」 


 空間に現れる、魔法陣。しかしその魔法陣の大きさは部屋中で描いており、そして後を追うことすら出来ないほどのスピードで、光り輝く魔法陣は出来上がってゆく。


 仲間相手にここまでするのかとアイカは愕然としつつも、必死に思考を働かせる。


 なんとかしなきゃ……!! イメージ、イメージ……!

 追いつこうとしても追いつかない。

 追いつこうとしても……。

 あれ……?


 今、魔法陣は出来上がってるとこ――。

 

 ユララムさんは、今魔法陣のどこかに居る……

 そうだ――

 そこのどこかに、……!

 私が魔法陣の場所を、魔法陣をかき乱すように徹底的に行きしたとしたら……どうなるだろう――。

 

 アイカの脳裏に、一つのアイディアが浮かび、瞳を閉じて深呼吸をした。


 イメージは、


「アイ、カちゃ……駄目だ、逃げ……」

「アイ……カ、お願い……! 今は、逃げ……!」


 床から顔をやっとのことで上げたマイキーとリーナは、アイカへ声を振り絞って出した。


「大丈夫、逃げない。行く、よ――!」


 アイカの瞳が開くのと同時に、空間へと駆けた。

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