第18話 ~チェイス~ ①


「ユララム、さん……!?」


 アイカは、この室内にて起きている現状が信じられないでいた。どうして、ユララムとマイキーが戦う事になっているのか。


「俺はあんたを初めて見た時から興味があったんだよ……。ルーキーにしては異常な動きだったからなぁ……?」


 ユララムの見た目とはまったく合わない言葉遣いが、空間に恐怖心を与えている。


「どういう、こと……?」

「俺は壊れていくものを見るのが好きなんだ」


 口元を釣り上げるユララム。


「仲間ってなんだよ、マジ胸糞わりぃ……バカじゃねぇのってな!!」


 ユララムはその場から

 マイキーは攻撃に備えるため集中力を高める。


『左10時の方向・エネルギー強』


「こっちか!!」


 マイキーはゴーグルからのデータと映像により、左方向へと防御の体勢をとるが、相手のスピードから繰り出される威力には身体全体では支えきれず、そのままマイキーの身体は部屋の端の壁へと叩きつけられた。


「ぐわぁっっ!」

「マイキーー!!」


 リーナは身体のバランスを崩しそうになりながらも、ぐったりと倒れたマイキーに急いで駆け寄った。


「くっ……」

「マイキー、しっかりして……!」


 リーナはポーションを用意するが、疾風によって弾かれた。


「使わせねぇよ。お前らは、俺がいる限り何もできない」


 姿は見えない。空間から聴こえるユララムの声。


「やめてよ……! マイキー苦しそうなのに……!」

「く……っそ……!!」


 リーナの腕の中で、マイキーの呼吸が次第に浅くなっていく。無駄だと分かっていても、ポーションを取り出す。


「バカじゃねぇ?」


 弾かれたポーションは地面に落ちて転がり、冷たく音を響かせた。ぐったりとするマイキー。


「きゃぁっ!!」


 リーナの身体も瞬時に部屋の端へと飛ばされ、壁に叩きつけられた。苦痛の声をあげたリーナの頬からは涙が流れていく。


「……!」


 アイカは自分の拳に力が入っていたことに気づいた。怒りがふつふつと、身体を駆け巡る。

 信じていたのに。正確には、信じようとしていたのに、だけど……。


 だけど……!!

 こんなのが、許されるはずが

 ない――――!!

 

 

 その時、ふと以前教えてもらったライトの言葉を思い出す。

 初めてキリバッドを倒して、飛びすぎたあたしを抱えてくれたライトの思い出が目の前に浮かぶ。。

 そして、あの時の言葉がリフレインする――。


『そうだ。アイカ、“跳ぶ時“も“着地”も全部イメージするんだ』


『イメージ? イメージでいいの?』


『そうだ。俺は今、ゆっくり飛んで行くイメージができてる。

 まぁ、この世界はイメージだな、基本』


 ライト……。

 温かい記憶を思い出し、胸に当てた手を握る。


 


 イメージ。


 ユララムの不気味な高笑いが遠くの方から聴こえつつも、アイカは息を吐き出した。


 イメージ。


 ユララムあなたに追いつく!!!


 アイカの身体が空間に吸い込まれるように、その場から消えた。

 その光景を見ていたマイキーとリーナは見たこともない光景を目の当たりにしたことで驚いた。

 その後また室内の別の空間から急に出てきたアイカは、バランスを保とうとテーブルに手を付き、キュルキュルと摩擦音を立てて身体の動きを止めた。


「おっと……。お前の速さじゃ俺を越せるはずねぇよ」


 空間から発せられるユララムの声に怒りが尚更湧いてくる。


 まだ、だ。まだスピードが足りない……!

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