続・師匠いじめ

crow mk.X

ドキドキ♡触手沼 〜幼女(偽)阿鼻叫喚編〜



陸に打ち上げられた魚のように跳ねる布袋。ソリに乗せられたそれは、捕まえてからここに引いてくるまでの何時間もの間、暴れ続けている。

これから待ち受ける己の運命を知り、拒絶しているのか。知らずとも、感じ取って拒絶しているのか。誰しも受け入れるということは無いだろう、ぶっちゃけ私も餌になれと言われたら拒否するし。

「可愛い私のペット達のためだ。許しておくれ、名も知らぬ幼女の見た目のおっさん」

「おっさんじゃない、幼女だ」

散々暴れた結果、破れてしまった袋から顔だけを出して、幼女(偽)が自分は幼女(真)だと主張する。声を張り上げたりはせず、冷静に、淡々と。この状況で落ち着いていられる幼女がどこの世界に居るというのか。異世界含めて探しても居るわけない。

「中身おっさんだろ。30手前くらいの」

「私は幼女、もうだめいだ」

「そうか。おっさんに似合わん可愛い名前だな。さてめいちゃんよ、もう目的地に着いたからサヨナラだ」

ヒィヒィ言いながら登った山もここが頂点。なぜかここだけは、名刀で横一文字に切られたスイカのように平らになっていて、この台地の中心には紫やら水色やらピンク色やら、何色もの絵の具をぶちまけたような水面が脈動し、まさに生の混沌という感じの沼がある。そこに餌を放り込むのが、私の仕事。袋を載せたソリの後ろに回り、ゆっくりゆっくりと押していく。めいちゃんはあの沼が良くないものと本能で察したのかまた暴れるが、もう諦めた方がよい。抵抗虚しくソリは沼の中へ。沈みはせず、浮かぶ。

さてここからは、趣味の時間。少し下がって、特設の観客席に座ると、丁度汚い虹色の水面からいくつもミミズのような、醜悪な肉柱が空を穿つ勢いで伸びでてくる。めいちゃんはもはや悲鳴すらあげていない。ただ目の前の現実を、白昼夢と思い込んで対応できていないだけか。

肉の柱が伸び終えると、今度は袋に向けて殺到し、勢いよく破り始める。粘液に塗れた麻袋の破片が顔に飛んできたので、はたき落として鑑賞再開。悲鳴があがっているが、触手が擦れ合う水音に消されてはっきりとは聞き取れない。クソカラスとは誰のことだろうか。

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