怪鳥の卵

ある国に。欲しいものは力ずくで手に入れ、逆らう者には容赦をしないとても傲慢な王がいた。ある日、王は国民にこのような事を言った。


「わが国の東の山には怪鳥が住んでいる。その鳥の卵はとても美味だそうだ。その卵を私は食べたい。取ってきてくれた者には金貨百枚を授けよう」


報酬目当てに、次の日から山にはたくさんの猛者が怪鳥の卵を目当てに登って行った。

しかし、山を登れても、怪鳥には敵わない。爪はどんな鎧も砕き、その嘴は人間の肉など容易く貫いてしまう。

国も何百人もの軍人による討伐隊を投入したが、誰も帰っては来れなかった。

やがて、怪鳥の卵を取りに行く者はいなくなった。


「ああ、あの卵が食べたい。あの卵が食べたい」


王は病弱になり、寝込む日が多くなってしまう。


「どうしたらいいんだ。このままでは王が死んでしまう」


王の僕も国民も頭を悩ませていた。

そんな問題を解決したのが、まだ十にも満たない少年だった。

少年は親の反対を押し切り一人で山に入り、次の日には怪鳥の卵を持って下山してきた。



王は少年が持ってきた卵を口にすると、たちまち元気になり、床から起き上がれるようになる。

後日、王は少年を王宮に招いた。


「少年よ、私の命を救ってくれたこと誠に感謝している。しかし、軍ですら敵わなかった怪鳥を君はどうやって討伐したんだ?」


王の質問に少年は首を傾げた。


「なぜ、討伐する必要があるんですか? 私はただ鳥に卵を一つくれと言って貰ってきただけです」


王は少年の言葉に感銘を受け、死ぬまで平和主義を貫いた。

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