第50話

「あれ? マヤさん、今の発言おかしくないですか?」


「え? なにかおかしいこといった?」


「だって転生の部屋って、そこから出て異世界にいったときに、記憶が消えるんですよ?」


「そうだね」


「なんで記憶があるんですか?」


「だってわたし、記憶を引きついだもん」


「えっ、それ本当ですか?」


「うん、そうしたらもう一個なんかくれるっていうから。それでMP一万もらった」


 ちょっとまて、ちょっとまて。


 混乱してきた。


 記憶がある?


 俺は、思いきってきいてみた。


「マヤさんって、俺の妹じゃないんですか?」


「あれ? やっぱりお兄ちゃんなの?」


「え?」


 え? なんだ?


「記憶があるなら、なんで言わなかったんだ?」


「聞いたじゃん」


「え?」


「だからさー、『どうしてわたしの名前を知ってるんですか?』ってきいたじゃん。そしたらお兄ちゃんが『周りの人にきいた』って」


「いや。俺は『どうして名前知ってるんですか』って聞いて。ああ、マヤは記憶がないんだなって……」


「だってお兄ちゃんだったとしても。お兄ちゃんに記憶がなかったら、わたし完全に変な人だし。なんで兄妹だっていってくれなかったの?」


 おいおい。


「いや、だって。お前がああして答えた時点で、マヤの記憶がないのは確定なんだし。そこで、『兄妹だよ』なんていったら、完全に変な人だろ俺」


「だいじょうぶだよ、お兄ちゃんは元から変な人だし」


「なんだよそれ。っていうかお前、妖精がいないじゃねーか」


「なにそれ」


「フェリリだよ。記憶を引きついだら、妖精が箱に入ってるんじゃないのか?」


「入ってなかったけど」


「入ってなかった? マヤは異世界語を、どうやって覚えたんだ?」


「普通に覚えたけど?」


 …………。


 なんかものすごい嫌な予感がするから、異世界語については、ここで切り上げることにした。


「記憶を引きついだら、みんな妖精がついてるんだと思ってたんだがな」


「そうでもなかったみたいナノね」


「わたしも妖精さんほしかったなー、そういえば、テッシさんのアイテム結局わからなかったね」


「そうナノねぇ……。魔輪ムゴワとしか、分からなかったね」


「でも、ちょっとだけ分かるデス」


「そうなんですか?」


「はいデス、これ引っぱると伸びるデス」


 テッシは魔輪ムゴワを、両手でつかんで引っぱると、腕輪は縦長に伸びた。


 どうやら、この腕輪はぐにゃぐにゃしているみたいだ。


「ヤキソバさん、ちょっと手をこの中に、入れてみてくださいデス」


 俺は、腕輪に右手を入れた。


 すると、俺の手首から先が消えた。


「うわっ」


 俺はおどろいて、手を引っこ抜いた。


「驚いたデスか? この腕輪は、中に入れたものを消す力があるですよ」


「そうなんだ……」


「出すときは腕輪を持って、『~をだせ』っていうと出るデスよ。バトルの使い方は分からないんですけど……」


「だから、引っ越しの今もってきたんだね」


「なるほどのう」


「これからは、テッシちゃんはふくろ係だねー」


「まかせるデス」


「いいのかよ……」


 その後、俺たちは引っ越しをすませ。


 マヤは――妹は宿の住人になった。

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