第43話

「ぼうなげ キャンセルスキル

 BP+零 五レンジ 棒をおとす なの」


 まともにダメージを与えられるのは、マヤさんだけなんだ。


 はやく彼女と俺の、『活動不能状態』を回復させないと……。


 俺は座ったまま、せなかの箱を開けはじめた。


「活動不能かいふく薬……、これだ!」


 俺がみつけたとたん、箱に大きな影がかかる。


 すると、急に俺の体は浮き上がる。


 服にしめつけられて苦しい。


 トロールだった。


 トロールが俺の体を……、やべえ!


 トロールはつかんだ衣服ごと、俺の体を引っぱって投げた。


 衣服がひき千切れるかと、おもうほどだった。


 俺の体は、樹木に叩きつけられた。


「いってーな」


「ヤキソバさん!」


「ヤキソバ殿、だいじょうぶか!」


「つまみ投げ

 BP+零 半レンジ ノックバック、自由方向に四レンジ なの」


 うめいて片目をひらく。


 心配そうに遠くから俺をみる、テッシとカゲヤマがみえた。


 トロールは?


 トロールの方をみると。


 やつは、箱のところにいる。


 なんだ?


 やつは箱の上に、がに股で立ち。木のぼうをもって構えている。


「こやつ、箱をまもるつもりか……」


「だいじょうぶだよー。わたしが魔法で箱ごと燃やしちゃうから」


「マジックはHPがゼロのとき――、『活動不能状態』だと使えないんですよ!」


「そうなのー?」


「っていうか、箱は燃やさないでください」


「大丈夫かのうヤキソバ殿」


 カゲヤマさんが、走りよってきた。


「しかし、箱を気にしてる場合じゃないかもしれないのう……、ヤキソバ殿」


「そういえば、HPがゼロの時に攻撃をうけると、生命力が減るんじゃなかったか?」


「しらべるナノ」


 フェリリが飛んでくる。


「ヤキソバ LP 六五/一三〇 なの」


「あと一撃で俺、『ロスト』じゃないか! ロストすると復活できないんだろ?」


「ヤキソバ殿は下がっておるのじゃ。あとはわしとテッシ殿で――『活動不能回復薬』を回収するのじゃ」


 にらみ合う、テッシとトロール。


「――、燃えさからんことを! えいしょう終わったよー」


 えっ。


 俺とカゲヤマ、テッシは、マヤさんのほうをみる。


 彼女は、ちゃんと立っている。


「ヤキソバが投げられているときに、わたしが、『活動不能かいふく薬』を回収しといたナノ」


 ナイス。


「よーし。いくよー!」


「まずい。俺の箱が――」


「わしにまかせるのじゃ!」


 カゲヤマはトロールの足もとの、箱にむかって走り出す。


「箱ごとくたばれ! パイロフレイム!」


 炎は地面をはねながら、トロールをおそう。


 同時にトロールは、マヤさんにむかって木のぼうを投げつける。


 カゲヤマは、トロールの足もとにある箱にむかって走る。


 風が吹く。


「いったー」


 しりもちを付いていた、マヤさんは立ち上がる。


 先にトロールを倒していたから、ぶじだったのか?


「ヤキソバ殿。だいじょうぶじゃ」


 箱をかざすカゲヤマ。


 箱はぶじだったか。よかった。


 トロール LV六五  HP   〇/九〇〇〇 BP五〇〇〇

 ヤキソバ LV一三  HP   〇/三〇三〇 BP二〇三〇

 テッシ  LV一三  HP一七一二/二六四〇 BP一九七〇

 カゲヤマ LV一四  HP三〇〇〇/三〇〇〇 BP二〇〇〇

 マヤ   LV 二  HP   一/ 四六〇 BP 一八〇


 ふう。勝ったか。


「大勝利いいいいいい」


「危なかったのう」


「そうデスね……、ヒヤヒヤでした……」


 俺はほっとして、ため息をついた。


「もうおそいから、帰りましょう。空も暗いですよ」


「そうじゃのう」


 俺たちは『活動不能』とHPを回復させて、町に帰ることにした。


 カンテラに火をつける。


「せめて次は、もうちょっと弱いやつにしましょう。あと、『活動不能かいふく薬』をもっと持っていきましょう」


「そうデスね。その方が安心です」


 ボイコット町が見えてきた。


「あー、やっと帰れるな」


 俺は、両手を頭のうしろに組んでいう。


「今日はくたびれましたデス――、ん? あれなんですか?」


 テッシが指さす方向に、黒い影が見えた。


「ガーゴイルじゃ!」


 ガーゴイルは、俺たちとボイコット町のあいだに着地した。


「カンテラ使ってるだろ! なんでだよ!」


「まずいのじゃ……。こいつは――、たしか先刻のトロールくらい強いんじゃ……」

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