第34話

「こう暗いと、ねむくなりますよね」


 テッシが、目をこすりながらいう。


「敵がいるかもしれないから、注意してくださいね」


 壁際族みたいな、ふいうちするのもいるしな。


「目がさめる情報があるなの」


「な、なんデスか?」


 テッシちゃんは、カゲヤマさんの後ろにかくれる。


「実はここには幽霊がでるナノ」


「う、うそデスよね」


 テッシはおびえ声だ。


 マジかよ。


 俺、幽霊とか苦手なんだよな。


「本当ナノ。ここは冒険者にも有名な、幽霊スポットなの」


 そんなところに連れてくるなよ。


 しかし、大の男がびびってるところは、見せられない。


「どうせモンスターだろ、そんなやつ俺がぶったおしてやんよ」


 俺は強がっていう。


 しかし、声がびみょうに震えている。


「さあ、それはどうでしょうね。ヤキソバとか、あんがい怖がりナノ?」


 なんか挑発的だな。


「じゃあ、そいつがきたら俺がたおしてやるよ、倒せなかったら、びびってるってことでいいぞ」


「そこまではいってないナノ、でも面白そう」


 フェリリがそこまでいったとき。


 俺は前方の洞窟のまがり角から、青白い炎がわくように出ているのをみた。


 しだいに青白い炎は広がり、やがてその姿をあらわした。


「きゃあああああデス」


「なんなのじゃアレは」


「幽霊なの!」


 それは高さは俺の背丈くらい。


 横幅は二メートルくらいの地面から五〇センチくらいのところで、空中浮遊するミニチュアの帆船だった


「幽霊船 LV二〇 HP二〇〇〇 BP一五〇〇

 大海原に沈んだ、船の恨みが積み重なった幽霊。

 海ではなく、洞窟に出現するところをみると、うらみはあれど、こうかいはしてないようだ。 なの」


 うわあ……。


 こわくねえ。


「約束どおり倒してやんよ!」


 俺は宣言すると、幽霊船にむかっていく。

 だが、二レンジくらいの距離まできたところで、青白い炎にはばまれて、近づくことができない。


「なんだこりゃ」


「幽霊船の障壁 パッシブスキル

 障壁、BP二〇〇〇以下 範囲二レンジ

 (BP二〇〇〇以下は自分から範囲に入れない) だってなの」


「なんだよそれ、攻撃できねーじゃねーか」


 幽霊船は砲撃してくる。


 ミニチュアの大砲だがいてえ。


「ミニチュア大砲 

 四レンジ BP二〇〇〇で攻撃 なの」


 俺はたまらず逃げだし、それを追うように三人は移動する。


 やがて、幽霊船はみえなくなった。


「この場合は、ヤキソバはビビッてたことになるナノ?」


「別にそれでもいいぞ……」


 俺はため息をついた。


 しばらく、きた道をもどる。

 俺たちは幽霊船にまた出くわさないように、幽霊船にあう道の、ひとつ前のまがり角をまがった。


「わたしが地図を買ってきたから、どんどん進んでも迷うことはないナノよ」


「それはナイス判断だな」


「しかも、この地図はコンパクトだし、水平にしなくても大丈夫なの」


 なるほど。


 一向はすすんでいく。


 すると、カンテラに照らされる壁から、飛び出た一本の剣先。


「これってアレですよね」


 テッシちゃんが、目をこすりながらいう。


「そうだと思います」


 おれは答える。


 こいつはスケルトン・壁際族だろう。


「ちょっかい出しちゃいましょう」


 テッシちゃんは武器をかまえる。


 俺たちも装備を抜く。


「いくデス!」


 テッシちゃんは武器をふりかぶる。


 そして、『ふり下ろし』をつかい、剣先の根元のスケルトンにぶつける。


 そのあと三人で攻撃し続けて、スケルトンを倒した。


「ん? なんだ?」


 スケルトンの入ってた穴。


 その穴の奥に、道が続いている。


 これは通路か。


「地図にのってないナノね」


 フェリリはいう。


 おそらく、スケルトン窓際族は穴をほって、うまって待っている。


 しかし、わかれ道をうめて、待っているやつもいるのだろう。


 洞窟の入り口ちかくだと、ひっかかるやつもいるが。


 冒険者も最初はひっかかっても、二回目は当然ひっかからない。


 なので、こいつはずっと冒険者をひっかけれずに、道をふさいだまま、うまったままだったのだろう。


「この先は未知の通路ってことですか? いきましょうデス」


 テッシちゃん、アグレッシブモードですか?


「わしは無難に、ふつうの道のほうがいい気がするのう」


「ヤキソバはどうおもうなの?」


 俺にふるのか。


「ちょっといってみようか」


 ここは、パーティメンバーの意見を尊重しよう。


「やったです」


 テッシは、小ジャンプでよろこんでいる。


「じゃあ、わたしがマッピングするなの」


 フェリリがいう。


「助かるよ」


 俺たちはどのくらい、うまっていたかもわからない。


 洞窟の先へ、足を踏み出すことにした。

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