日々憐々~壱~(春・10首)

茜差す 朽木となりし 学び舎に

来ぬ人を待つ 傘ありぬれど



吹き荒ぶ 神の御息みいきに 花一厘はないちりん

境の果ては 胡弓こきゅうの道理



春風に 揺れる薄桃 捕らえれば

刹那のこいと 想えど嬉し



春の野辺のべ 赤き実摘む手が 君に触れ

そのみ口にし 甘きをうた



穢れ無き清らな白衣びゃくえ君に似て

千の錦衣きんいも霞む他無し



傘一つ互いの對肩ついかた露に濡れ

重ねて笑ふ比翼鳥ひよくどり



盛りとて散華無常さんげむじょうの花の雨

理抱ことわりいだき龍天に昇る



世の人は騙し騙され四月馬鹿

我もうそぶく嘘は吐かぬと



春嵐はるあらし揺らすは華か我魂わがたま

一里駆ひとりかければ寂寂じゃくじゃくの夢



ひばり鳴き戦の終わりを告げるとて

笑顔霞し涙五月雨

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