2-3
学校からの帰り道。
「良かったですね、友達ができて。ゆんゆんは、前世がダイオウコドクムシじゃないのかと疑うぐらいに、ぼっちを貫いてきましたからね。ちょっと心配だったのですよ」
浮かれながら隣を歩いていたゆんゆんに、私は言った。
「好きで一人でいる訳じゃないからね! ……って、めぐみん口元。あーあー、女の子なんだから少しぐらいは身だしなみに気をつけなさいよ、ソースがついてるわよ?」
言いながら、私の口元をハンカチで甲斐甲斐しく拭ってくるゆんゆんは、なんだか母親みたいだ。
「実はゆんゆんの事を、友達になろうと言いながら近寄ってくる悪い男に、簡単に騙されそうな社会適応能力のない子だと思っていたので、明日からは少し安心できますよ」
「私はめぐみんの事を、ご飯を奢ってあげるよと言いながら近寄ってくる悪い男に、簡単に騙されそうな生活能力のない子だと思っていたから、明日からが少し不安なんだけどね」
私の口元を拭っていたゆんゆんと視線を交わすと、その場でバッと大きく距離を取る。
「面白い事を言ってくれますね。この私がご飯欲しさにノコノコ男について行く、チョロいお手軽女だとでも?」
「めぐみんこそ、幾らなんでも私の事を侮り過ぎじゃないかしら。友達って言葉さえつけばホイホイ男についてく様な、チョロい尻軽女だとでも?」
道端でゆんゆんと対峙しながら、不敵に笑いあった。
「おやおや、私には……『俺達友達だろ?』って一言でダメ男にいいように使われているゆんゆんの未来が、簡単に幻視できるのですがねえ!」
「私には、生活能力がないから簡単に路頭に迷い、めぐみんのタイプとは真逆な感じのダメ男に、プライド捨ててご飯奢って下さいと泣きつく姿が幻視できたわ!」
……ライバルを自称するこの娘とは、ここで決着をつけておかないと!
威嚇するポーズを取る私に、警戒しながら身構えるゆんゆん。
一触即発な状況の中、突然横合いから声が掛けられた。
「あれ、めぐみんじゃないか」
そちらを見ると、我が家の近所に住む、靴屋のせがれが立っていた。
「ぶっころりーじゃないですか。こんな所で何してるんです?」
私やこめっこにとって近所のお兄さんみたいな存在なのだが、『世界が俺を必要とする日がくるまで力の温存をする』とか言い張り、毎日家でゴロゴロしている人だ。
そんな彼が外をうろついているのは珍しい。
「最近、モンスターが活発化して、里の近くにまで出没したらしくてね。さっきまで、里周辺のモンスターを駆除してたんだ。いやあ、『今こそ温存してきたその力を振るう時だ!』って頼られてさ、張り切っちゃったよ」
そういえば担任が、里のニート達を率いてモンスター狩りをするとか言っていた。
体よくタダ働きさせられたのだろうけど、本人は満足そうだしそっとしておこう。
「そういや、普段は見かけない妙なモンスターがいてね。あれは何だったんだろう? この里の周辺にあんなヤツいたかなあ……」
そんな事を呟くぶっころりーが、ふとゆんゆんと目が合った。
「……我が名はぶっころりー。アークウィザードにして上級魔法を操る者……。紅魔族随一の靴屋のせがれ、やがては靴屋を継ぎし者……! 族長の娘さんだね。どうぞよろしく」
「あっ! は、はい、ゆんゆんです、よろしくお願いします……」
ぶっころりーの大仰な自己紹介に、恥ずかしそうに顔を赤らめ、俯きながら小さな声で名乗るゆんゆん。
せっかくの名乗りチャンスなのに、やはりこの娘は変わり者だ。
「で、二人は何してたんだい? なんか、バトルっぽい熱い雰囲気だったけど」
「そうでした! この娘と、どちらが上かを決める血みどろの殺し合いをするのでした!さあゆんゆん、いきますよ!」
「待って! 普通の勝負するだけじゃなかったの!? そんな覚悟私には無いから!」
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