陽子の場合
夫の奏太と暮らしていた家を出てもう2ヶ月になる。
結婚と共に奏太に付いてこの街に来て4年。1人になると、こんなにも寂しい街だったのかと実感する。
離婚の原因は、たぶん陽子だった。陽子は自分が結婚に向いていない人間だと、かなり若い頃から悟っていた。けれど、人並みに愛情はある。この人なら大丈夫だ、と選んだ相手が奏太だった。
奏太も分かっていてくれているはずだった。
陽子は、神経質なまでに妊娠をしないように気を配った。ピルを処方してもらい服用し、行為の際は必ずコンドームを着けさせた。基礎体温を正確に記録し、妊娠の可能性の高い日は絶対に行為を拒んだ。
「子供は欲しくないの。自分の時間が無くなるのが嫌だから・・それでもいいの?」
付き合って2年になる頃、奏太にプロポーズされた夜。1番はじめに出た言葉がこれだった。
奏太は
「陽ちゃんがそれを望むなら構わないよ。子供の為に結婚したいんじゃない、陽ちゃんと結婚したいんだから。」
そう言って抱きしめてくれたのに。
明後日、この家をも出る。地元に帰る事にしたのだ。思い出を抱えたまま知らない街に居続けるのは、とても辛い。
6人にはまだ離婚を伝えていない。帰るのが少し怖い。
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