第38話-発見

ヒデヨシとしての活動をはじめて数年が経ったある日、彼はJRセントラルタワーズのとあるカフェで、面白い噂を耳にした。

何となくその話を要約してみると、最近大須商店街よく歩いている2人の少女のうち1人は、盲目の美少女らしく、いつももう一人の少女に寄り添うようにして歩く。

美少女は「フラリエ」と呼ばれていて、本当の名は誰も知らない。


都市伝説や童話の類の話にも聞こえるが、この街ではよくある、取るに足らない有名人の話だ。

しかし、ヒデヨシにとっては違うのだ。

盲目の少女 と聞くだけで反応してしまう。


その少女が、彼の探している少女なのかどうかもわからないが、それでも一見の価値はあると踏んだヒデヨシは、普段は歩かない大須商店街へと足を踏み入れた。





彼は、過去に何度か大須商店街に足を踏み入れていた。

しかしここ数年、ヒデヨシと名乗るようになってからは、自然と足が遠のいていた。

そういえば、あの「魔法使い」は元気だろうか。

少しだけ顔を見て行こう。


そう思い、老舗の喫茶店の隣へと足を運ぶ。

良かった、繁盛しているようだ。



少し安堵した彼は、周りを見渡す。

唐揚げを食べる人の中に…2人の少女がいた。


なるほど、確かに見えていないらしい。

ロリータ服に身を包んで、開いた口に唐揚げが運ぶのを待つ少女は、片時ももう一人の少女の袖口を離さない。



しかし、少女が盲目であるとわかっただけでは何もできない。

少女の能力は封じられているのだ。

攫った所で、彼女が若宮 蘭なのかどうかがわからなければ判別のしようがない。









1月23日。

ヒデヨシは2人の少女を尾行した。

姿を消した、見つかるはずのない尾行だ。




少女は、やはり若宮 蘭だった。

考えればフラリエ といえば、若宮通にあったランの館の現在の呼称だ。


しかし調査の甲斐もあって、ヒデヨシはついに決意する。


能力が封じられていても、少女が若宮 蘭であるなら、攫う意味はあるのだ。


1月30日。

若宮 家 襲撃。

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