2-5 勇者パーティー面接 その1 聖騎士

 勇者パーティーの面接用として用意されたのは、城の外壁にほど近い、明るく風通しのよい小部屋であった。調度類は椅子と長机だけというシンプルな室内。

 扉を正面にして椅子に腰かけ、最初の面接者を待つことにした。

 ここに案内してくれた侍従の話によると、面接はボルトムント大臣が紹介した順序に従って、聖騎士、モンク、魔導士、魔剣士、狩人、シーフとなるらしい。

 待っている間にハーレム候補のおさらいでもしておこうと、アイテムボックスから「冒険の書」を取りだし、「登場人物に関する記録」のページをめくる。


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◆聖騎士 セシア・ライオンハート

仲間のひとり。聖騎士は重装備が可能な戦士で、聖属性の回復魔法が使える。

初期装備がB級の「聖騎士の鎧」「聖騎士の兜」であるため、最後まで装備を変更する必要がなく、金銭負担が少ない。

攻守のバランスが良く、序盤から中盤まで活躍するが、攻撃力が上がりにくいので、終盤は決定力不足になりがち。敵からの攻撃が集中する「孔雀くじゃくかんむり」を装備させ、壁役かべやくとして使うと効果的か。

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 しばらくして、扉がノックされると、淡い金髪をした女性がはいってきた。

 翡翠ひすい色の澄んだ瞳で俺の目をまっすぐに見つめてくる。


「セシア・ライオンハートです」


 簡潔な自己紹介の後は薄紅うすべに色の唇をきりりと引き締め、武人らしく背筋をピンと伸ばしたまま直立不動の姿勢をとっている。

 ファンタジー要素が強いこの世界では美男美女が珍しくないが、その中でもとびきりの美女である。だが、俺の目は彼女の凛々しく透明感のある面差しではなく、その胸に釘づけとなっていた。


 バカな!

 なぜ俺はいままでの周回で気づかなかったのだ!?


 俺は座ったまま、セシアを見上げる姿勢となっている。

 彼女は先ほど紹介されたときの聖騎士の正装、全身をおおう金属鎧フルプレート姿から麻のチェニックにズボンという軽装に変わっていた。生成きなりのチェニックはいかにも実用的だが、胸元と袖口に草花をモチーフにした刺繍がほどこされており、女性らしさものぞかせている。

 しかし、それにしても胸だ。

 チェニックは首もとまでしっかりと留められた色気のないものだが、胸のところがいまにもはじけそうなほど張りつめ、押しこめられてなお存在感を主張するおっぱいが俺の目をとらえて離さない。


 俺はおっぱい派ではないはずだ。

 胸が大きいというだけでグラビア雑誌を手に取ったりはしない。


 だが、目の前のセシアの、少女から女性に移りかわる透明で真摯しんしな美しさと、この秘された巨乳のコントラストが俺の精神を根こそぎ刈りとっていく。

 Gか、あるいはHに届くかもしれない。

 しかも、まだ成長途上だとしたら。なんという破壊力だろうか。


「勇者どの!!」


 急に大声を出されて、俺の身体がビクンと跳ねあがる。

 まずい。おっぱいを注視しすぎたか。

 軽蔑されたかもしれない。これでは、品行方正な勇者が折り目正しく交際を申しこむという俺の基本プランが崩壊してしまう。

 初対面の印象のまずさに奥歯を噛みしめつつ、俺がセシアの顔をおそるおそる見あげると、彼女は羞恥しゅうちに頬を染めていた。


「違うのです。これは、その、甲冑姿で面接に臨むのも失礼かとなるべく地味な服を選んだのですが、いつのまにか胸の部分が窮屈になっていて。

 決して! 決して、胸を強調して勇者どのに手心を加えてもらおうとか、女として気を惹こうなどという邪心はありません! そもそも訓練漬けで筋肉質の私に女の魅力などないことは重々承知しております。

 どうか、勇者どの! 女としてではなく騎士として、私を測っていただきたい! 他の候補者と比べて、体力や筋力では負けていません! 防御力なら聖騎士である私が随一であると断言できます!」


 想像の斜め上をいく反応に、しばし思考が停止する。


「勇者どの! 私はどうしても魔王討伐の供にならねばならないのです!」


 ゆっさゆっさ、と俺の肩をつかんで揺さぶる。


 待て!

 それはまずい。


 圧倒的なボリュームのおっぱいが目の前で、ゆっさゆっさと揺れている。

 服の上からでもわかる柔らかさ。そして、

 

 まさか!

 

 俺は衝撃に打ちのめされて、呆然ぼうぜんと揺れるおっぱいを見つめた。

 この揺れ方、そして、この服の上からでもわかるかすかな突起。


 ―――グフぁッ!!

 の、ノーブラ、だと!?


 間違いない。

 麻の布地からわずかに透ける桃色のふくらみ。


 正気なのか?

 これでは抜き身の刀を振りまわしているようなものではないか!


 目の前でこんな凶器を揺らされては、童貞で女体耐性ゼロの俺など裸で敵陣に特攻するようなもの。このまま理性を失って、おっぱいにしゃぶりついてしまっても不可効力ではないか。

 俺の高邁こうまいなイチャイチャラブラブハーレムの理想は目の前のエロの誘惑には勝てないのか!?


「あの、勇者どの、大丈夫ですか?」


 固まってしまった俺にしびれを切らしたのか、セシアが声をかけてきた。

 ハッ、と俺は寸でのところで獣性を押しとどめ、目の前の小欲に負けてハーレムという大望を不意にしてはならないと自分に強く言い聞かせる。

 深呼吸をして、


「俺が仲間に求めるものの第一は信頼だ。生死をともにする仲間として互いに信頼に足るかどうか。次に魔物と渡りあえる実力だな。

 では、面接をはじめるから、とりあえず座ってもらおうか」


 キリッと表情を営業用に切り替えて、セシアに席をすすめた。

 まだ俺が胸を凝視していたことが気になるのか、彼女は二の腕で胸を隠すような不自然な動作で長机をはさんだ向かい側に座る。

 押さえつけられ、寄せられたおっぱいが逆にとんでもない破壊兵器となって俺の視界の端に飛びこんでくるが、ここはもてる精神力のすべてを注ぎこんで真剣な表情をつくった。我慢の限界は近いかもしれない。


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『 セシア・ライオンハート 』

リンカーン王国の国境警備にあたる「龍爪りゅうそうの騎士団」に所属する聖騎士。

【種 族】 人間ノーマ

【クラス】 聖騎士

【称 号】 前騎士団長の忘れ形見

【レベル】 1(F級)

【愛憎度】 ☆/-/-/-/-/-/- (F級 私も勇者どのと共に)

【装 備】 お気に入りのチェニック(F級) 古びた革靴(F級)

【スキル】 長剣(E級) 大剣(F級) 槍(F級) 弓(F級)

      格闘(F級) 盾(F級)

      聖魔法(F級)

      乗馬(E級) 水泳(F級)

      裁縫(F級) 料理(F級)

      勇猛果敢ゆうもうかかん(D級) 聖なる信仰(D級) 騎士道(F級)

      蜘蛛恐怖症

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「では、あらためて自己紹介から。

 俺の名前はカガト・シアキ。

 勇者として魔王討伐の使命を授けられた」


 真剣なまなざしでセシアがうなずく。

 前の世界の基準でいえば、北欧系の顔立ちだろうか。白銀に近い金色の髪。白い肌に鼻筋がすっきりと通り、エメラルドグリーンの瞳と意思の固そうな口もとが北欧神話に登場する戦乙女ヴァルキリー、勇者を導く女神を想起させる。


「最初に断わっておくが、魔王討伐の旅は過酷だ。

 『光の守護』によって死をまぬがれるとしても、致命傷を受けたときの痛みや苦しみは変わらない。パーティーで力を合わせなければ、何度も死地をさまようことになるだろう。

 だから、魔物との戦闘を含め、旅のあいだは必ずリーダーである俺の指示にしたがってもらう」

「はい! 私はどんな命令にもしたがいます!

 聖騎士として集団戦の訓練もつんでいますので、ぜひ前衛で魔物の攻撃をふせぐ盾役をお命じください」


 セシアの迷いのない言葉に、おもわず「冒険の書」を見られたのではないかと背筋に冷や汗が流れる。こんな清冽せいれつな美人騎士をつかまえて「壁役かべやくとして使うと効果的」とか書いてしまう過去の周回の俺には猛省をうながしたい。

 気を抜くと机にのせられた爆乳に向かってしまう視線を、強靭な意志の力でセシアの美しい瞳に固定し、面接官として最初となる質問を投げかけた。


「まずは、君がなぜ命の危険をおかしてまで魔王討伐の旅に志願したのか、動機を聞かせてほしい」


 セシアは頭のなかで語るべき想いを構成しているらしく一点を見つめて黙考し、たっぷり時間をかけてからつやのある唇を開いた。


「私の父はもともと龍鱗りゅうりんの騎士団に所属する騎士であり、若くして聖王様の警護を担うという栄誉に浴しました。そのえんもあって聖王家のオフィリア姫がご懐妊されると、私を産んだばかりの母がアリシア姫の乳母に選ばれたのです。

 つまり、おそれながら、私とアリシア姫は乳兄弟の関係なのです。

 私は幼い頃から、幼いなりの覚悟をもって、アリシア姫をお守りしてきました」


 思い出にひたるように目をつむり、


「アリシア姫は、本当に心の優しい、気持ちの素直な子でした。

 私のことも本当の姉のように接してくれて、セシア姉さん、セシア姉さん、といつもいっしょで。笑顔が素敵で、誰にもわけへだてなく接して、王女という立場も軽やかに飛び越えてしまう活発なところもあって。たとえば、こんなことが――」


 頬をわずかに上気させて姫との思い出を滔々とうとうと語りつづけるセシアの顔を見ていると、姫というよりも妹、妹というよりも年下の恋人について聞かされている気がしてくる。女子高の百合ゆり的雰囲気をもつ間柄だろうか。

 数々のエピソードに俺が二人の関係を妄想していると、話はアリシア姫が魔王にさらわれるくだりに及び、セシアのキリリとした眉が苦しげに寄せられていく。


「アリシア姫は急逝きゅうせいされたオフィリア姫のあとをついで白鷺湖の聖宮で巫女の役目につき、そこで魔王にさらわれたのです。

 ちょうど私は聖騎士の叙勲じょくん式のため聖宮の警護から離れていて、肝心なときにアリシア姫のそばについていることができませんでした」


 翡翠色の瞳がうるみ、はらはらと涙がこぼれおちる。

 セシアは感情のたかぶりを抑えるように、机の上に置いた両手のこぶしを固くにぎりしめた。


「急報を受け、私が昼夜をついで馳せもどったとき、聖宮は魔神城と化し、白鷺湖の美しい湖面は瘴気と毒でよどみ、アリシア姫救出に向かった龍爪の騎士団の分隊は、団長である父を含め、生還したものは誰ひとりいませんでした。

 アリシア姫の一番近くにいた私がまっさきに駆けつけなくてはいけないのに、あふれる魔物に押しもどされ、腐敗湖に近づくことすらできず、ひと月前の魔王軍との決戦の際にも突入部隊への参加を希望をする私の願いは退けられ、多くの同輩が戦死するなか無様に生き延びてしまいました。

 聖王様の格別の配慮で生かされているのだとわかっていても、もうこれ以上、待つことには耐えられないのです。

 私の目的はただひとつ。騎士の誇りにかけて、アリシア姫を救いだすこと。

 この命を捨てて願いが叶うのなら、いくらでも差しだします」


 決然と俺を見つめる彼女に、それ以上の覚悟を問う必要はなかった。

 おもえば俺はこれまで、パーティーメンバーのことをただの戦闘要員としか考えてこなかった。所詮しょせんはノンプレイヤーキャラ。彼らの言葉、感情表現もただの設定。そういう気持ちが常にあった。

 だが、目の前で、こうも切実に心情を吐露されると、俺は間違っていたと認めざるをえない。俺にとってどうであれ、彼らにとってはこの世界が唯一で、このグランイマジニカの今を真剣に生きているのだ。

 俺も、ダメならすぐに次の周回、という投げやりは捨てる。たとえ不本意な展開になろうとも、粘り強く最後まで諦めずにイチャイチャラブラブなハーレムを目指すと決意をあらたにした。


「セシア・ライオンハート。君の覚悟はよくわかった。

 俺も約束しよう。勇者の名にかけて必ずアリシア姫を救いだすと」

「勇者どの、ありがとうございます!」


 ピロリン♪ と軽快な音がして、セシアが上気した顔で身を乗りだしてくる。

 チェニックの端が机の角に引っかかり、あわや爆乳がその巨艦の全貌ぜんぼうをあらわに! というところで俺は明鏡止水の境地でやんわりと肩に手をあてて押しもどした。ここで御開帳になれば、間違いなく理性の針が振りきれて、セシアを押し倒していただろう。

 危機に気づいたセシアが赤い顔でせっせと服の裾を引き伸ばしている。


「志望動機は良いとして、大事なのは互いに信頼できるどうか。パーティーメンバーとしての相性だな。

 俺が求める条件は2つある」


 服を戻したセシアが真剣な表情で、ごくりと唾をのみこんだ。


「まずひとつめは旅の優先順位が俺と同じかどうか。

 最終目標はもちろん魔王を倒し、アリシア姫を救いだすことだが、旅の途中で困っている人がいれば、たとえ寄り道することになったとしても俺は助けたい」

 

 かつて最速クリアを目標とした俺はクリアに必要のないシナリオを削ぎおとし、レベルアップに非効率な人助けは容赦なく無視した。その周回はもちろんカオスドラゴンを倒してクリアしたわけだが、勇者に素通りされた人々の結末は知らない。

 健全なハーレムを築くためには、まずは健全な世論が必要だ。たとえ魔王を倒した勇者であっても、自分たちの願いを踏みにじり、救いを求めるものを見捨てた傲慢な英雄を人々は本心から称賛するだろうか。粘り強く、最後まで諦めずにハーレム計画を完遂すると決意した以上、民心の取りこぼしは許されない。


「勇者どのの高邁な志、このセシア・ライオンハート、感服いたしました!

 アリシア姫を救い、民も救う。これこそ騎士の本懐。勇者どのの決断にしたがうことを、我が剣にかけて誓います!」


 表面だけは立派な俺の言葉に、セシアは頬を紅潮させて激しく首肯した。また、ピロピロリン♪ と甲高い電子音が聞こえる。

 チラリと周囲を見まわすが、音源になりそうなものはどこにもない。

 疑問符を頭に浮かべたまま正面に向きなおると、セシアの瞳にはキラキラと畏敬の輝きがわかりやすく浮かんでいる。それはそれで心地よいのだが、清廉潔白な勇者像から抜けだせないようであれば過去の周回と同じてつを踏む。

 俺は早々に「真の目的」を切りだすことにした。


「条件のふたつめは、俺の婚約者となる覚悟があるかどうか」


 声は届いていたはずだが、理解が追いつかないらしく怪訝な表情を浮かべている。

 自分がなにか聞きちがいをしたと判断したのだろう。「あの、もう一度」と申し訳なさそうにつぶやくので、ダメ押しの直球勝負をする。


「つまり、究極の信頼の形である『結婚』を前提に、君を仲間に誘いたい」


 ブブー! ブブー! ブブー!

 耳障りな警告音とともに、セシアの表情が困惑から怒気をはらんだものへと変わっていく。紅潮していた頬の血の気がひき、白い肌がさらに白くなった。


「からかうのはやめてください!!」


 バンッ! と両手を机に叩きつけ、胸が大きく揺れる。


「勇者どのも結局、私を共に戦う仲間ではなく、女としてしか見ていないということですか!?

 女の私が魔王討伐に名乗りをあげるのは、そんなにおかしなことですか!?」


 口惜しさに唇を噛む表情もまた美しい。

 涙目になっているセシアにむかって、俺は頭を下げた。


「誤解させるような言い方をして、すまなかった。

 だが、婚約者になってほしいと言ったのは嘘や冗談ではない。俺は異世界より召喚された勇者。このグランイマジニカでは天涯孤独の身だ。

 魔王討伐という途方もなく危険な旅路に、戦闘だけを目的とした仲間を連れていくことに不安を感じる。できることなら、心から信頼しあえる家族と旅をしたい。魔王を倒したその先も、グランイマジニカの復興に尽くすことのできる本当の家族と」

 

 セシアは探るような視線を俺に投げかけてから、ためらいがちに口を開く。


「本当の家族ですか」

「ああ、本当の家族だ。つまり、俺と結婚することを視野に、婚約者となる覚悟があるならパーティーに参加してほしい」


 翡翠色の瞳が伏せられて、視線が机のうえをあてどもなくさまよう。

 唇がわずかにひらき、また閉じて、固く引き結ばれる。

 しばしの沈黙のあと、逡巡が終わったらしく、セシアの目があがった。


「私は、アリシア姫を救いだせるなら、この命をいくらでも差しだすと誓いました。その言葉に嘘はありません。婚約が条件というのであれば、それを受ける覚悟はあります。

 しかし、私が勇者どのと釣りあうのでしょうか。

 父はたしかに龍爪の騎士団の団長をつとめ、男爵位に叙せられていました。けれど、もともと蓄財に興味がなく、先に亡くなった母の実家もすでにありません。だから、私には後ろ盾になるような財産も親戚も何もないのです。

 勇者どのは魔王討伐の任を果たせば、救国の英雄として聖王家との婚姻すら視野にはいるでしょう。私との婚約は、勇者どのの前途をくらくするだけ。

 それでもいいのですか?」


 とりあえずセシアが絶対拒否ではないとわかり、俺はニヤニヤしてしまった。

 なんだ。こういう展開もあるじゃないか。

 いままでの周回では決して踏みこめなかった領域に、俺はいる。王女を助けたいという相手の弱みにつけこんで強引に婚約を要求し、まったくもって勇者らしくはないが最終的に幸せにすることで帳尻を合わせればいいと肚をくくった。

 そのための努力は惜しまないつもりだ。


「君は騎士として、俺の背中を預かってくれるのだろう?

 それ以上に必要なものはない」


 俺の言葉に、セシアの目が大きく見開かれ、再び頬が紅潮する。

 ピロリン♪ ピロリン♪ と音が鳴った。

 

「たとえ結婚しても、私は聖騎士を続けますよ」

「もちろんだ。俺は勇者として、君は聖騎士として、助けを必要とする人々を守っていこう。君がありたい自分でいられるように協力は惜しまない」


 ピロリン♪ とまた音がして、セシアは満開の桜のような華やいだ笑顔をみせた。

 俺が手を差しだすと、すこし戸惑いを見せつつも机をはさんで握手する。


「では、よろしく頼む。君に認めてもらえる男になるよう努力する」

「アリシア姫を救いだすことを第一に考えてください。

 婚約者といっても、私はまだ勇者どののことをよく知らないので、婚姻までの節度は守ってください」


 節度のレベル感をすり合わせたいところだが、最初から要求を高くしすぎても嫌われるだけだろう。粘り強く、徐々に打ち解けていくしかない。

 セシア・ライオンハートとの面談が終了し、軽く頭を下げて退出するその後ろ姿、安産型のお尻をじっくりとながめていたとき、俺はようやく気がついた。


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『 セシア・ライオンハート 』

リンカーン王国の国境警備にあたる「龍爪の騎士団」に所属する聖騎士。

【種 族】 人間ノーマ

【クラス】 聖騎士

【称 号】 前騎士団長の忘れ形見

【レベル】 1(F級)

【愛憎度】 ☆/☆/-/-/-/-/- (E級 勇者どのの背中は私が守る)

【装 備】 お気に入りのチェニック(F級) 古びた革靴(F級)

【スキル】 長剣(E級) 大剣(F級) 槍(F級) 弓(F級)

      格闘(F級) 盾(F級)

      聖魔法(F級)

      乗馬(E級) 水泳(F級)

      裁縫(F級) 料理(F級)

      勇猛果敢ゆうもうかかん(D級) 聖なる信仰(D級) 騎士道(F級)

      蜘蛛恐怖症

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 「愛憎度」の等級がFからEにあがっていることに。

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