ナグラリア~in search of the Safe Haven~

@bowbow777

第1話プロローグ

あなたが欲しいものはなんですか?

力? 知識? お金? 愛?

私はどんな望みでも叶えてあげられます。

遠慮することはないのです、およそ73億人いるこの世界で偶然にも私と出逢ったのですから。

さあ、願いを言ってください。


『俺は……自由になりたい』


あなたにとっての自由とは、なんですか?


『窮屈な社会のルールとか、煩わしい人間関係のない世界』


『そんな世界で生きたい』


……わかりました。

それがあなたの望みならば。


            ◇          ◇           ◇



ジリリリリリリリリリリ!!

ピッ


目覚まし時計を止めた。

時刻は午前6時30分、いつもと同じ時間だ。

のそのそと布団から這い出して、いつも通り、パンをトースターに入れ、テレビをつけた。


『皆さんおはようございます!お目覚めニュースプレシャスのお時間です!』

『本日午前1時頃、静岡県上空で、不審な発光体が発見されました!光はおよそ30分ほどで消えましたが、原因がわからず、現在調査中とのことです!』

『いや~私、きっとこれはUFOだと思うんですよね~!だってだって、何もない空で急に光りだしたんですよ!これはもう未確認飛行物体というほかないとおもうんですよ!!ついに私の夢だった地球外生命体との接触が叶うかも!う~ん、プレシャ~ス!』


この番組は、毎回こんな感じでお姉さんがニュースに対しての感想を言ってくれる。

そして、このお姉さんがとてもかわいいのだ!

正直この番組がなければ、会社になど行く気が起きないだろう。

ありがとう!お姉さん!

などと考えていたら、パンが焼けた。

いつも通り、テーブルの横の冷蔵庫からマーガリンを取り出し、パンに塗り、咥えた。

そういえば、今朝はなんだか変な夢を見た気がする。

一人の女性が、あなたの望みを叶えますって問いかけてくる夢。

そこで俺は、自由が欲しいっていったんだっけ。

妙にリアリティがあったけど、ベッドで目が覚めたんだ、あれは現実じゃないだろうな。


パンを食べ終えた俺は、顔を洗って、歯を磨いて、くたびれたビジネススーツに袖を通した。

時刻は7時15分、さあ、今日もまた昨日と同じ日常だ、かったるいとか思いながら玄関を開け一歩踏み出した。

そこにあるはずの地面がなかった。

そして目の前には、清々しい青空。

地面を踏めなかったことを認識した頃には、俺の体が、はるか上空から地面へと引っ張られていた。

落下しながら、さっき自分のあけたドアが見えた。

不自然に空中に残っているドアから誰かが手を振っているのが見えた。


俺の意識は、そこで途切れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る