トースターの家

 今日、マリは友達の家にお招きされています。おめかしをして、お菓子を持って、もらった地図を頼りに友達の住むアパートへ行きました。


 階段を上って三つ目の扉。ここが友達の住む部屋です。すこしどきどきしながらインターホンを……押そうとして伸ばした人差し指の先はくるくるとなにもないところを指すばかり。インターホンのボタンがどこにもありません。


 不思議に思ってしばらくボタンを探しましたが、やはり見つかりません。けれど代わりに、妙な、けれどマリがよく知っているものが扉の横に付いています。

 それは、オーブントースターについているタイマーのです。オーブントースターならこれをひねって時間を設定すればその通りにパンなどが焼けます。


 マリはどうすればよいかわからなくなりました。けれどふつうならインターホンのボタンがある場所にこのつまみがあるのですから、これをひねればベルが鳴って友達が出て来るかもしれません。


 マリはとりあえず5分の位置までつまみを回し、しばらく様子を見ることにしました。


 ジリジリジリジリ……


 つまみはゆっくりと0を目指して動きます。それを見てマリが気が付きました。……大変、このままでは中の人たちがこんがり焼けてしまう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る