新しいヒーロー

 マリは町を守る正義のヒーローになることを決意しました。ヒーローに必要なのは変身衣装です。マリは物置部屋から狐のお面とセーラー服を引っ張り出してそれらを纏い、自転車に乗ってパトロールを始めました。


 その姿を見た小学生たちはマリを尊敬し、弟子にしてほしいと頼みました。たくさんの小学生の弟子を従えてマリはパトロールを続けます。泥の溜まった溝の中も怯まず進みます。弟子たちは汚水を嫌がりましたが、マリを尊敬しているので真似をして付いて来ました。


 殺人事件が起こったという話を聞きつけて、マリは現場へ行き、犯人探しをすることにしました。「犯人は葬儀屋の奥さんよ。殺した後に自分の仕事場で火葬して証拠と死体を隠滅したのよ。なんて完璧な推理でしょう!」全くのデタラメでしたが、弟子たちはマリを称えました。


 満足してパトロールに戻ると記憶退行しているお爺さんとすれ違いました。家族に支えられて歩いています。「戦争行くのじゃ! がんばるぞー」と意気込んでいました。


 ふと、マリは自分が迷子になっていることに気が付きました。弟子の小学生たちは不安になり、マリに失望しかけました。ですが「あっちよ」とマリは自信ありげに、しかし全くデタラメな方向を指差して、その方向へ進みました。すると、なんと偶然にも見慣れた商店街に出ることができました。弟子はマリを見直しました。

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