お祝いの筒

 錆びた鉄板を継ぎはぎして出来た、長い真っ暗な筒の中をマリはすべり落ちていきます。すべりながら筒の壁を触ってみると所々に紙が貼り付いていることにマリは気付いたので、それを回収しながら筒の中をすべり続けることにしました。しばらくして筒が終わり、マリは澱んだ茶色いプールに放り出されましたが特に驚く事も不快感もありません。


 外は暗く、真夜中のようでした。マリはざぶざぶと音をさせながらプールから上がって、筒内で回収した紙を確認するとそれらは全て手紙で、どの封筒にも『マリちゃん、お誕生日おめでとう!』と書いてありました。「クラスのみんなからだよ」といつの間にかマリの傍にいた小学生くらいの女の子が言いました。なんのクラスのことかはわかりませんでしたがマリは嬉しく思い、封筒を開けて中身を見ていると女の子が「そんなの、みんな嘘だよ。そんなこと書いたって、みんなホントは何も思っていないんだから」と囁きます。けれど、マリは女の子の存在も女の子の言葉も全く気になりませんでした。


 マリたちの目の前にはお手洗いのマークに似たものが描いてある看板が提がった幼稚園があって、その壁にご機嫌で落書きをしている男の子がいました。マリはその子に「ここのクラスの人数は何人?」と訊くと「31!」と元気のよい答えと笑顔が返ってきました。手元の手紙を数えると、思った通り31通ありました。この幼稚園の子たちがバースデーメッセージの贈り主だったのです。取りこぼしが無いことにマリは安心しました。

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