ミイラマリ

 たくさんの人がマリを殺すために家に押し掛けてきます。殺されてはたまらないのでマリは彼らを屋上から落とすなどして抵抗しました。


 一通り倒してくたびれて家に帰ると、知らない男が「いいものを見せてやるから来い」と言ってマリを家の廊下へ招きました。


 廊下は新しい白い蛍光灯で明るく照らされています。誰かは廊下の一番奥にある書斎の扉へ向かって「おい、出てこい」と何かに呼びかけました。瞬間、マリは嫌な予感がして「いや!見たくない!」と拒絶しました。マリは何が起こるかわかっているはずなのに何が何だかわかりません。


 書斎の扉がゆっくり開き、真っ暗な中に使われなくなった家具が詰め込まれているのがほんのりと見えます。そこから何かが擦れた声と息をもらしながらマリの方へ向かって廊下を這って来ます。マリは、こわくて見られませんでしたが誰かに腕を掴まれ無理矢理それを見させられました。


 這ってきたのは、ひからびたマリのミイラでした。


 ミイラなのに生きているそれは微笑んで「こんにちは、わたし」とマリに声をかけました。やせ細り、皮膚は茶色く変色していて、呼吸をするのも精一杯でつらそうなその姿にマリの面影は見えませんでしたがマリはそれが紛れもなく自分であることを知っていました。マリは誰かに閉じ込められ、何年も助けられなかったのです。その後、ミイラマリは救助隊に抱えられ去って行き、残されたマリはひとり、震えていました。

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