隠した妹


 マリの6才の妹が母親の不注意で死んでしまいました。父親に知られてしまうことを恐れた母親は大きな紙袋に妹を入れ、マリの部屋のベッドの下に隠しました。母親は妹を“行方不明”にしようとしているのです。マリは悲しみました。こんなこと、隠し通せるはずがありません。けれどマリは妹の行方を懸命に探す父親に真実を話す事ができませんでした。


 父親は何度もマリのベッドの下を見ようとしましたがその度に母親はさりげなく止めました。マリは妹の死体が見つからなかったことにホッとする気持ちと、見つかってしまえば好い、と思う気持ちがありました。


 そのように誤摩化す生活も何日か過ぎ、マリは修学旅行へ行く日が近付いていることに気付きました。マリは妹の死体を気にしながら旅の支度をしました。妹の死体が入った紙袋には妹の大好きだったぬいぐるみや洋服やおもちゃが一緒に入れられています。こんな粗末な紙袋が妹の棺になるなんてあんまりだ、とマリは思いました。そして妹が腐敗することが恐ろしくてたまりませんでした。


 突然、父親がマリの修学旅行の支度を手伝おうとして部屋に入って来ました。そしてベッドの下の収納スペースに手を伸ばします。すると「ねえ、コートは持っていったほうがいいと思う?イギリスは今、寒いかしら?」といつの間にか部屋のドアの傍にいた母親が声をかけて父親の意識をクローゼットの方へ向けようとしました。


 数日後、両親に見送られてマリは修学旅行に出発しました。「あなたの旅行中に死体はどうにかするわ」と母親がマリに耳打ちをしました。



 修学旅行から帰ると知らない人たちが家にいました。外にも大勢寄りたかっています。何事かと慌てて家に入ると居間にいた母親がマリを見て諦めた笑顔で「バレちゃった」と言いました。マリは「そう」と、微笑みました。中にいたのは警察でした。


 いつの間にかマリの傍らには死んでしまった妹に瓜二つの女の子がいました。けれど、“妹にそっくりな別人”です。その子は「これから、仲好くしてね」とマリに言いました。マリが「うん」と答えるのを見て母親は「わたしにはそんな言葉かけてくれなかったわ」と苦笑しました。


家族で、ベッドの下から運び出される妹が入った紙袋を見送りました。母親は懲役10年を言い渡されたそうです。マリにも少なくとも数ヶ月の懲役が課せられる予定です。

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