宇宙から来たお姫様

 卒業式前日。マリはずっと気になっていて、けれど声をかけられずにいたクラスメイトの女の子を放課後にあそびに誘うことにしました。その女の子は、宇宙から来たお姫様です。


 どきどきしながらマリがあそびに誘うと姫は「委員会が終わったら行きます」と言いました。校庭でマリが待っているとバルコニーから「待っていてくださいね」と姫に声を掛けられ、マリはうれしくなり「待ってるね!」と大きな声で返しました。周りにいた生徒はそれを見てクスクス笑います。ですがそんなマリを見て姫は微笑みました。


 雨が降る中ずっと待っていて、姫が委員会を終えてマリの元へ来たのは夜の7時でした。傘を差して姫は申し訳なさそうに「遅くなっちゃった」と言ってマリの顔を見ると、マリは気にしていない様子で笑顔だったので姫は安心しました。


 さっそく街へふたりであそびに行くと、姫は輸入雑貨のお店でチョコレートを買いたいと言います。おいしそうなチョコレートを見つけてレジへ持って行きましたが値段が外国の表記のままなのでお店の人もいくらで売れば好いのかわからずしばらくレジで揉めました。


 次のお店ではサンドイッチがほしいと姫は言いました。姫の好みのものが見つかり、それを持ってふたりでレジに並んでいる時にマリは「あなたとあそぶの、すごくたのしい」と姫に伝えました。すると姫は嬉しそうに微笑みましたが「卒業後も会える?」と続けてマリが訊くと、はぐらしてすこしさみしそうに笑いました。それを見てマリは、彼女は遠くへ行ってしまうのだとわかり、今まで遊ばなかったことをとても後悔しました。彼女はきっと宇宙へ帰ってしまうのでしょう。マリは「あした、卒業式の後、わたしの家に来て」と姫を誘いました。


 帰宅するとマリは明日のために部屋の掃除を始めました。すると棚から上質な和柄の布が出てきたのでマリはそれを姫にあげようと思いました。


 次の日。卒業式の朝——卒業式は10時からですが、マリが起きたのは9時でした。急いで支度をしなければ間に合いません。ですがこんな時に限って、式典用の正装の制服見つからず、靴下はおかしな色になっていました。なんとか身支度を終えてマリは走りましたが、卒業式には間に合いませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る