逢魔ヶ時
薄暗い夕暮れ時 のこと。眼鏡をかけた賢そうな顔をした小学生の女の子が、ぽつんと道に一台だけ置いてある古いクレーンゲームで遊んでいました。景品はぬいぐるみです。
クレーンゲームの台の前にはふたり腰掛けられるベンチがあって、眼鏡の子はそこに座っていました。マリもクレーンゲームをしたくなったので横にあった発券機で『クレーンゲーム券(2枚1500円)』を買ってゲーム台が空くのを待つことにしました。
券を持って、眼鏡の子の隣に座ろうとしましたが、一足先に長い黒髪をした細身な女の子が座ってしまいました。眼鏡の子のお友達のようです。マリは席が空くのをすこし離れたところで待ちます。
黒髪の子は沈んだ表情をしていましたが、対照的に眼鏡の子は明るく話をしています。その様子を見てマリはなんとなく、黒髪の子は幽霊かもしれない、と思いました。
しばらくしてふたりはぽつぽつと会話を始めました。黒髪の子が「ねえ、帰ろう。あなたと一緒にいると、わたし、皆に幽霊だと思われちゃう……」と悲しそうに言うと眼鏡の子は「なんでそういうこというの? あなたのことをそんな風に言うみんながおかしいんだよ! 間違っているのはみんなだよ!」と憤って言いました。黒髪の子はうつむいて「違うよ、あなたが、間違った場所にいるんだよ」と呟くと眼鏡の子は何かを思い出したようにハッ とし、ショックを受けているようでした。
そのやりとりを聞いて、幽霊なのは眼鏡の子の方だとマリは気が付きました。死んでしまったのにそれに気付かず彷徨う友達を黒髪の子は放っておけず、追っていたのです。それで、周りに自分まで幽霊の仲間扱いされてしまったのでしょう。
クレーンゲームが空く様子は ありません。
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