039 [ヘアルツ]南口1 <04/04(木)PM 06:08>
出会いの街[ヘアルツ]に到着して、真・クリスタルの力によってLV10へとLVUPし、宿屋を確保した俺は、そのまま夕暮れまでの時間を『プレイヤーショップ巡り』をして過ごした。
その後少し早い晩飯として、ミスターチキン[ヘアルツ]店で、ササミカツ丼を食べて、『宝箱探し』をするべく南口1前の広場へやって来ていた。
◆◆◆出会いの街[ヘアルツ]『主要街路』イメージ図◆◆◆
※東1、南1の十字路の中心にクリスタル
2 1
北北
2西╋╋東2
┣┫
1西╋╋東1
南南
2 1
「………」すっかり忘れていたのだが、出会いの街[ヘアルツ]には、方角毎に門が2つ存在する。そのためゲーム時代は、難易度の低い方を1、高い方を2と呼んで混同しない様にしていた。
……というわけで、今後はゲーム時代と同様に呼称する事にしようと思う。
さて、昼間に探索や、ダンジョン募集に参加しなかった理由なのだが、来たばっかりというのもあるが、周辺モンスターとの戦闘データが全く無いからである。
『どいつ』の『どの攻撃』で、『どれくらいのダメージ』であるか? 少しは把握しておきたい。それとLVUPと転職で、治癒能力とMAXHPの関係のバランスが、どう変化したかも調べておくべきだろう。さすがに転職後に辻ヒールすらしていない状態で、『ぶっつけ』でパーティ参加するのは気がひける。
そんな事を考えながら、『南口1前の広場』にやってくると、探索等から引き上げてきたらしきプレイヤーやパーティの姿があった。
とりあえず広場の片隅を見るとベンチが空いていたので、いつもの様にそこに座り、『インベントリ』から『バリ好きー(お得用)』を取り出した。量り売りしてもらったので満タン(100%)だ。昼飯は、ひつじまんとう?(不確定名)だったしな。
ミケネコさんは初めて食べた時の様に、”両前足”を俺の足について立ち上がり、尻尾をブンブン振り回している。 ……だから犬っぽいですよ?
どうやら長時間バリ好きーを摂取しなかったため、禁断症状が出始めている様子。やはりコレにはヤバイ成分が入っているとしか…。
まぁ無意味におあずけにする必要も無いので、素早く掌に小盛りにして、興奮したミケネコさんの前にバリ好きーを差し出す。
「はい、どうぞ」
「やった♪」
カリカリカリポリ、カリカリカリポリ…… 凄い勢いでミケネコがバリ好きーを噛み砕いていく。う~ん、『
夢中で食べているミケネコさんを見てから、広場の様子を
ぱっと見た感じ、付近のプレイヤーのLVは5~12といったところだ。まだ『みならい』が多い。強行突破してきた場合は、この南口1方面でLVUPを狙うしか無いだろうから、俺を含めて、ここに居るのが[ヘアルツ]での最低LV者という事になる。
さすがにLV4以下でやって来るプレイヤーは居ないのか見当たらない。まぁここでの最弱モンスターはLV5だしな。「イルカモネ山猫LV5ぐらいは、問題無く倒せる様になってから来てね?」…という事だろう。
それから広場の北西側、ちょうど『南口1』と『南口2』の中間地点あたりに、〈治療院〉が確認出来た。この[ヘアルツ]から登場する施設だ。
〈治療院〉では、有料でHPの回復と、状態異常の治療が可能である。
気がつくとミケネコさんが、ザラザラの舌で俺の掌を舐めていた。”バリ好きー分”を補給出来て満足したのか、ミケネコはいつもの様に毛づくろいをしながら、
「しあわせ~」
とつぶやいた。ふむ、しあわせ成分は、バリ好きーにしか含まれていない可能性が?
さっそく学会で発表せねば。 …などと どうでもよい事を考えつつ、不要になった『バリ好きー(お得用)』を『インベントリ』に放り込んだ。
「よし、ともかく様子を見てまわろう」
「は~い」
ミケネコを連れて南口1の門を抜けて街の外へ向かった。
門を抜けるとそこは…… 『お花畑』でした。
うん、ゲーム時代と同じだな。出会いの街[ヘアルツ]名物の一つである。
ここ南口1,2方面には、『非アクティブモンスター』である『発芽ねずみ』LV5が居る。名前の通り、何かが頭から
しかし『病原菌 媒介生物』であるので、
よく見ると花畑の そこかしこに、『発芽ねずみ』の姿が見られる。とりあえず、
「…万能抗原体[オールマイティーワクチン]」
気休めだが、せっかく『対策スキル』があるのだから使っておくべきだろう。ゲーム中の感触だと『対策無し』と比べると、状態異常発生率や、感染率は確かに低かった。
「………」ところでTJOのこの『状態異常:病気』であるが… 実は『本人には全く害が無い』のである。その代わり『接触感染』であるので、触れる、触れられると”一定の確率”で相手に感染してしまうのだ。もちろん相手にも全く害は無い。
「それでは『状態異常:病気』とは何なのだ?」、とお思いになるだろう。なんと接触感染させてしまうと、〈通常状態〉であっても、相手へ『攻撃した』とみなされるのだ。
パーティ、クラン、レギオンのメンバー等であれば問題は無いのだが(感染はする)、そうで無い相手に感染させてしまうと、善行悪行値がマイナスされてしまい、イエローネームになってしまう。『無神経に病気を他人に移した』という悪事が罰せられるのである。
感染してしまった場合、アイテムか、先ほどの〈治療院〉等で治療しないと、ひたすら善行悪行値がマイナスされ続ける可能性がある、…という恐ろしい状態異常なのだ。
ただし、『感染したプレイヤーに故意に触れる』、『故意に接触し感染させて、他の人物に接触させる』等、わざとイエローネームにさせようとした悪質プレイヤーが存在したために、感染後『60分間』は他のプレイヤーに感染しない様に修正された(ちなみに彼等は即座にBANされた)
状態異常:病気感染59:59 →00:00になると発症 →状態異常:病気
まぁようするに、病原性ウイルスを
実害が無いため子供の「エンガチョ」や「バリア!」などの遊びの様でもあるが、TJOは悪事へのペナルティが重いため、遊び感覚で他者に感染させたりすると酷い目にあう。
「ご主人さま~?」
また長考してしまった様だ。ミケネコさんに頼りすぎになっている。
「すまん、助かる」
ミケネコさんのアゴの下を、少しコショコショしてから今後の方針を説明する。
「とにかく この花畑の外側を、大きく時計回りで宝箱を探す。ネズミに触らない様に注意だ」
「は~い」
まずは南口の塀に沿って東に進むと大きな深い亀裂が走っている。『この亀裂があるために[ヘアルツ]は、北方向に拡張されていった』…という設定だ。
亀裂の向こうには俺達のやってきた『東口1方面』が見えているのだが、一番狭い場所でも10mはあるので飛び越えるのは無理がある。つまり[スパデズ]の様に街を1周とかは出来ない。(そもそも北口方面の散策は、LV30程度は無いと無理である。もう[スパデズ]村の様に、数LV差のモンスター配置ではないのだ)
そしてその亀裂にそって南東に進んでいくと、対岸まで30mほどある大きな川があり、亀裂に向かって滝の様に流れ落ちているのだが…、亀裂が深いため流れ落ちる途中で霧状になっていて、日中は『大きな虹』が見られる絶景ポイントになっている。
ちなみに川の対岸からは、その亀裂の一部がスロープの様になっていて、滝の裏側のダンジョン[虹の洞窟]へと続いているのだが、推奨LVは最低でも50以上は欲しいところだろうか。今の俺には関係の無い場所であろう。
この川の付近に来ると花畑はまばらになり、辺りには『茶色』のニワトリが見られる様になってくる。『非アクティブモンスター』の『ナゴヤシュダガヤ』LV7だ。
『ナゴヤシュダガヤ』は、『
まぁこの[ヘアルツ]南口方面で、万能抗原体[オールマイティーワクチン]を使える『みならい僧侶』系の、『活躍の場』を用意してくれていたのだろうが、運営も「こんなに僧侶系を選ぶプレイヤーが少ない」… とは思っていなかったのだろう。
おまけに『完全に防げるわけでも無い』という微妙さも相まって、『発芽ねずみ』は『対処法の無い状態異常を使うモンスター』といった扱いで、[スパデズ]の『シマブタ』なみに敬遠されていた。(『発芽ねずみ』を狩る →感染する →治療院で治療 →治療費がかかる →「マズ~い、もうたくさん」 …という訳だ)
そして積極的に「狩ろう」というプレイヤーがあまり居ないので、『みならい僧侶』系も見せ場を1つ失った、…という悲しい過去がある。
だがどちらにせよ『非アクティブモンスター』なので、初回こそ『初遭遇ボーナス経験値』が貰えるが、俺にとって、今後は2種ともどうでもよい存在となる。
宝箱を探しつつ、目新しそうな素材をミケネコさんのストレージに放り込んでいると、前方に『黄色の一つ目模様の兜』を着用した存在を発見した、周囲に人影は無い。
視界の右下の方へ意識を向けると<04/04(木)PM 06:42>と表示されている。
「ミケネコ、予定を変更するぞ」
どうやら一足早く『苦行』の時間がやってきた様だ。
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LV:10(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:5,665G
武器:なし
防具:布の服
所持品:9/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×24、バリ好きー(お得用)95%、樽(中)100%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ
万能抗原体[オールマイティーワクチン] あらゆる状態異常、病原体への抵抗力をあげ予防する。万能だが過信は禁物、感染してからは効果が無い。
※実は、『状態異常』に対して『抵抗失敗』や、『感染の判定』が出た場合に、『90%の確率で強制的に回避する』という結構『強力な効果』なのだが、「何度回避しても運悪く元の”感染などの判定”が出まくる」、「運悪く10%に当たる」等で、プレイヤーにとってみれば「食らう時は食らう」ため、『気休め』呼ばわりされている
「ご主人さま~ なごやしゅだがや ってなに~?」
「『ナゴヤシュダガヤ』か…… まぁ詳しくは話せないのだが、そのままらしいぞ」
「そのまま~?」
「あぁ、そのまんまだ」
「ふ~ん??」
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