第14話

 父親が亡くなったときの話をしよう。

 といっても、父親の死に目に立ち会ったわけじゃなく、人づてに亡くなったことを聞いただけなのだけれどね。

 連絡は警察からきました。たぶん、父親を含めて父親の周りの人間、誰もわたしの連絡先を知らなかったからだろうけれど。

 警察から電話が来た時点で、だいたい察しますよね。「あ、親関係だな」と。だってそれ以外に警察にお世話になる覚えなんてありませんから。ちょっとした手続きで警察のお世話にはなってたけど、そのときはタイミング的に関係ないやろと思ったしね。

 仕事中でした。時間は忘れちゃった。ふとスマホを見たら、知らない番号から電話が来てた。知らない番号だったけれど、その時点で嫌な予感はしてた。番号が、なんか実家周辺っぽいなあって思ってね。

 で、番号検索してみたら警察ですよ。あちゃーってなるよね。

 留守電も残ってた。でも内容を聞く気になれなくて、とりあえず折り返すだけ折り返したらどこからかけたか判らないって言われて、そのときは用件が判らなかった。

 留守電は聞きたくなかったし、たぶん何も知らぬ存ぜぬで通せるものなら通したかった。でもねー、仕方ないよね。これはダメなやつだなーってぼんやり思ったから。

 その時点では、亡くなったかまでは考えてなかったな。どこか知らん辺境の土地で徘徊してたか、誰かの車と事故でも起こして迷惑をかけたか、前みたいに意味の判らない理由でひとに殴りかかって留置所にでもいるか。まあせいぜいそんなとこだろと思ってましたけどね。どれにしたって、わたしには関係ないって突っぱねてやるつもり満々だったんだけど。

 仕事終わりに結局諦めて、留守電聞いたら刑事課ですよ、刑事課。刑事課から電話きたこと、あります? あちゃーってなるよ、あちゃーって。

 仕方ないので改めて折り返して、そこで初めて父親が亡くなったことを知らされました。

 家で亡くなってたもんで死因も判らなくて、まだ事故か事件かも判らないから遺体は警察で預かってるって。

 そのときに、遺体を引き受けるつもりはないって伝えたつもりなんだけれどね。後から交通課に窓口が移ったときに引き継ぎに問題があったんだろうね、なんでかわたしが遺体を引き取る話になってたよ。お隣さんが余計な気を利かせてくれた結果なのかもだけれど。他の場所でものすごくお世話になったから、さすがに文句は言わなかったけれどね。

 電話口でしたけれど軽く事情聴取を受けて(アリバイってやつを訊かれましたよ)、その日はそのままになりました。

 当日は実家には行かなかったし、というか行く気もなかったし、友人と遊ぶ約束が入ってたんで普通に遊んで帰りました。たぶん、親のために予定を変えるってのが気に入らなかったんだな。


 いつか死ぬことは知ってました。永くないことは判ってた。でも、さすがにあっという間すぎてね。実家を出てからまだ五年も経ってない。

 ひとが死ぬのはあっという間だし、あっけない。

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