第11話

いまTLで流れてきてぽそっと呟いたので、煙草の話。

両親とも、煙草を吸うひとでした。それも尋常じゃないくらい吸うんです。父親は知らないけど、母親は一時期は一日二箱とか吸ってたんじゃないかな(そのお金を食費に回せば良かったのにね)。家の中にいる間はわたし自身麻痺しちゃってるから気づかないけど、外から家に入った瞬間息苦しく感じるくらい臭い。友人に、お前にもの貸すと絶対煙草臭くなるからなあって言われたときはショックだった。

だからわたしは、煙草が嫌い。いまは、友人が吸っているのに眉をひそめるほどではないですけどね。学生時代は本当に嫌いだった。煙草を吸っている人間は軒並みクズだと思っていた。

家の中でガンガン吸うわりにろくに掃除もしない家だったから、家中がヤニだらけでね。わたしはつねに部屋を閉め切ってたからそこまででもないけど(それでもひどかった)、いつも二人がいた居間とか居間の隣の台所とかは本当にひどかった。全体的に黄ばむ通り越して茶色になってたもの。居間と台所のものには基本的に指一本触りたくなかったし、出来ることなら足を踏み入れることすらしたくなかった。まあ実際、わたしが家の中で足を踏み入れる場所なんて自室と風呂とトイレくらいだったけれど。1Rで生活してたようなものだから今の生活は随分と向上したものです(笑)

わたしにとって、煙草は両親の記憶と直結しているんです。だから、煙草がとてもとても嫌いだった(作中の小道具としての煙草には美しさを感じるけれど)。でも大人になってみると、どうしてもイライラしたりして、そんなときは煙草を吸う大人の気持ちが判るなあとちょっと思ったりして。あ、でも、父親と母親の気持ちは判りませんけれどね。恐らくあの二人には、煙草以外なかったのでしょう。お金もない、趣味もない、仕事もない、相手をしてくれる友人もいない生活で、時間をつぶせるものなんて煙草以外になかったのでしょうから。いまとなっては想像でしかないですけれどね。

わたしはずっと両親が嫌いと言い続けているけれど、それでもわたしは両親に似ているんです。父親の自分本位で相手の意見なんか全くきかない横暴なところはわたしも似てるなと思うし、母親の自分の不幸にばっかり浸って同情をひきたがって悲劇のヒロイン気取りしたがるところなんかともそっくりだ。知ってるよ。わたしが所詮そんな人間でしかないってこと。母親のほうは血もつながってるので、たぶん顔立ちも似ているのでしょう(たまに幼なじみに会うと、親御さんに似ていてはっとすることがある)。考えると気が狂いそうになるのであんまり考えないようにしているけれど。

そんなわたしにとって、親との一番判りやすい違いが「煙草を吸っていない」ことなんですよね。だからわたしは、これから先も煙草を吸わないと思うよ。まあ実際、煙草を吸うほどお金に余裕がないというのもあるけれどね(笑)


おまけ話。

父親と最後に会ったとき、というか隣人たちが必死に父親の相手をしてくれているときに、父親はずっと煙草を吸っていたそうです(わたしは居間には近づかなかったから知らないけれど)。

テーブルにはもうかちこちのご飯が置かれていて(しかもそれが、冗談のように山盛りだったらしいです。どういうことなの。ちょっと見ておけばよかった)、しかもそれが数日前に見たときも全く同じ位置に置かれていて、手をつけている様子もなかったとか。たぶんお腹がすいたのを紛らわせるのに煙草を吸っているのだろう、とのことでした。

火事でも起こさなきゃ良いけれど。父親が焼け死ぬのには何の感慨もないけれど、近所のひとにご迷惑をおかけする訳にはいかないでしょう。まあ知らないですけれどね。

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