無名無題

伽藍 @garanran

第1話

無名無題っていうのは、私のサイトの名前です。もう何年も更新してないけどね。でも何となく消すのは惜しくて、そのままにしてある。無名無題。何にもない。実はね、伽藍って名前もそうなんです。がらんどう。何にもない。最初は響きが気に入ってつけた名前なんだけど、本当にその通りだなあって。


最近はまあ仕事もそれなりに安定してきて、そりゃあ勿論しょっちゅう辞めてやりたいって思いますけどね、一応の収入がある。そうするとね、生活にある程度の余裕が生まれるわけです。で、そんな余裕が生まれてくると、忘れちゃうんです。いろんなことを忘れていっちゃう。いまふっと母の遺影を見て、そんなことを思って、忘れるくらいならいっそ文章に起こして残すのもありかなーと思った。つまりこれは、そんな呟きです。カクヨム見てるとけっこうみんな自由に使ってますよね。そりゃ他のサイトに比べると随分窮屈そうだけど、これ書いちゃいけないあれ書いちゃいけないってのは一応あんまりなさそうだ。とりあえず今のところ私が文章置き場にしてるのはカクヨムかピクシブくらいなんで、じゃあカクヨムかなあって。備忘録。ある日ふっと消すかもしれないし、意外と残してるかも知れない。


ところで死にたいって思ったことあります? 多分ありますよね。誰かを殺したいって思ったこともあるかも知れない。そりゃあ人間ですもの、そのくらい普通です。要するに、実行するか、思うだけか。一線超えるか超えないかなんて案外簡単で、私はたまたま実行しなかった。それだけ。これを読んでる方が今までどんな人生を送ってきたかなんて知りませんし、多分これから知る機会もないでしょう。だから無責任にこう言っちゃおう。いま誰かを殺そうとしてるひと、いま死にたくてたまらないひと。とりあえず散歩してみたらどうでしょう。まあそんな切羽詰まったひとはカクヨムなんて見てないでしょうけどね。

ここで我慢して、努力して、それで素晴らしい人生を掴めるよ! って言えれば良いんですけどねー。残念ながらそうじゃない。だって死にたくて死にたくて仕方ない人生をようやく生き延びた先がさらに地獄だったなんて、いくらでも転がってる話ですものね。多分わたしの母もそんな人生だったんじゃないかなー。知らないですけどね。

つい数か月前、母が亡くなりました。あんまり仲良くなかったんです。今となっては母がどんなひとなのかもよく分かりません。だって嘘ばっかりだったんです。父との思い出も、義理の母との思い出も、たまに語ってくれましたけどね。もうほとんど覚えてないし、二つだけ覚えてることがあるんですけど、どっちも嘘です。いや、思い込みかも知れないね。あのひとの世界は嘘と思い込みで出来てた。でもきっと、現実の世界で生きていくよりは楽だったんでしょうね。

ひとの骨って見たことがありますか。まあ見たことがないってひともいるでしょう。母の骨を見たときにね、ああこのひと人間だったんだ、って思ったんです。ひとの形をしていて、一応それなりに人間らしく死ねて、火葬もできて。骨がひとの形をしているのを見たときに、ああ人間だったんだなあ、って思ったんです。それくらい、私にとって母は異物だった。でもね、あのひと人間だったんです。そんなことも私は知らなかったんですよ。骨がね、ひとの形をしてたんです。それがね、すごく衝撃的で、それでもって衝撃を受けたことそのものにまた衝撃を受けたのを覚えてます。

きっと忘れちゃうけどね。私、ずっとそうなんです。何もかも忘れちゃう。だから備忘録です。こうやってたまに、忘れたくないことをふっと綴ります。

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