黒き聖夜の集い
@omg_red
#おじゲル尊い
※時系列がおかしい可能性があります
※本編の設定に忠実ではありません
※口調とか細かく検証してません
※細けぇことはいいんだよ!
――某所、ホテルにて。
少女が1人、本を読んでいる。フリルの多い服で傍らには大きなぬいぐるみ――ゲルダだ。彼女を監視すべきレオナと、ついでにヴォルフはこの場にいない。
ページをめくる表情は気怠げである。何度も読んだ本だからだろうか。
ふと、顔を上げると。部屋に白い粒が舞っていた。
「……雪?」
確かに今は12月で雪がちらついてもおかしくはないが、ここは暖房の効いた部屋の中。
雪の出所を探してゲルダが窓の外に目を向けると、そこには
「メリークリスマス」
「あ、おじちゃん」
黒いコートを着た壮年の男性、ノルベルトが立っていた。頭には赤白のサンタ帽を被っており、お世辞にも似合っているとは言い難い。
ゲルダが駆け寄り窓を開けると、勢い良く冷気が流れ込んできた。思わず身を縮こませる。
「おじちゃん、今度はどこに連れていってくれるの?」
「いや、今日は君を連れ出しに来たんじゃないんだ。悪いがね」
「そうなの?」
不満顔のゲルダ。苦笑しつつノルベルトは続ける。
「代わりにプレゼントを持ってきた」
「プレゼント?」
「ああ。今の俺はサンタクロースだからね」
頭のサンタ帽を指して言う。
「変なの」
「俺もそう思う。だが仕事なんだ」
そう言ってノルベルトは懐から小箱を取り出した。帽子と同じ色のリボンが巻かれている。
「まあ、そういうわけだから受け取ってくれないか」
「……ありがと。開けていい?」
「ああ、もちろんだ」
嬉しそうに包み紙を開けるゲルダを、ノルベルトは慈愛の表情で見つめていた。
程なくして。
「クックック、メリークリスマス! このオレがロックなプレゼントを持ってきてやったぞ!」
「あ、おかえり」
サンタ姿のヴォルフが戻ってきた。長身の彼と同程度はあろうかという巨大な人形を抱えている。
「その人形のどこがロックなのよ」
続いてレオナが部屋に入ってくる。彼女もサンタ姿――肩出しミニスカといういかにもな格好である。布地が少ないぶん経済的だし、上にコートを羽織れば寒さも問題にならないとのこと。かえって危険に見えるのは気のせいである。誰か描いて。
「何を言う。この眼帯がロックだろう」
「さっぱり解らないわ」
「解ってもらおうとは思わん。オレがロックだと思うものがロックなのだ」
ああもう、とレオナは持っていた荷物を並べ始める。結構な量であるが、ヴォルフが人形を抱えていたため全てレオナが持つハメになっていたのだ。
「このバカは放っておいて夕御飯にしましょう。クリスマス風の料理を買ってきたから……あら?」
ふと、ゲルダの胸元に目をやる。
「貴女、そんなペンダント着けていたかしら?」
「これ? これね。サンタのおじちゃんに貰ったの」
笑顔を見せるゲルダと、怪訝な表情で顔を見合わせるレオナとヴォルフだった。
夜の道端でホテルを見上げる男がいた。周囲に人影はあるが、通りすぎるばかりで彼を見咎めるものはいない。
「まあ、ギリギリ及第点といったところか。少なくとも他の奴等よりはマシだ……俺も含めて、な」
ポケットの中を探る仕草をし、止める。
「今夜ばかりは神に感謝しよう。信じちゃいないがね」
ホテルに背を向けると冷たい風が吹いた。それが収まった頃には彼の姿はなく……
白い粒が幾つか舞うのみであった。
黒き聖夜の集い @omg_red
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