第7話 恐怖のきゅうり
その時、ネコは恐怖していました。気が付くときゅうりが側にあるからです。
朝目が覚めてふと周りを見渡すときゅうり。
ご飯を食べて落ち着いて振り向くとそこにきゅうり。
テレビを見て笑ってCMの時に横を見るときゅうり。
家族と話していて何かの拍子に目が行くとそこにきゅうり。
お風呂上がりに何か飲もうと台所に行くときゅうり。
寝ようと思って布団に入って電気を消そうと思ったらそこにきゅうり。
おはようからおやすみまで気が付くとそこにきゅうり。
しかもそのきゅうりはみんな別々のきゅうり。
家族の誰に聞いてもこのきゅうりの事は知らないって言います。最初こそ特に気にしていなかったのですが、これが続くと流石に怖くなってきました。
こんな事を一体誰が? 何の為に? ネコはもう気がおかしくなりそうでした。
そもそも何故きゅうり? ネコは自分のきゅうりの関係をずっと考えていましたが、全然思い当たる事はありません。
この事件の恐ろしいところは家以外でも起こる事でした。
ふと入ったネカフェでもきゅうり。
ホテルに泊まった時もそこにきゅうり。
友達の家に遊びに行った時もきゅうり。
自分の行動を先読みした誰かがきゅうりを置いている?
自分の周りにきゅうりを置く遊びが流行っている?
それとも行く先々できゅうりを並べられる呪いにかかった?
どの仮説もそれを証明する事は出来ませんでした。
ネコは怖くなって怖くなってずっと眠らずに犯人が現れるのを見張っていました。
けれどネコがふと目を離した隙に別の場所にきゅうりが忽然と現れるのです。ここまで来るともはや怪奇現象としか思えません。
冷静に考えれば、そのきゅうりがネコを襲う訳もなく被害的には大した事ないはずなのですが、ネコの精神的疲弊はかなりのものになっていました。ネコにしか見えないきゅうりではなく、物理的にそこに存在しているのです。もう全く意味が分かりません。
こう言う事が続いて、ネコはすっかり参ってしまいました。そうしてネコが重度のきゅうり恐怖症になってしまった頃、突然その現象は止まりました。
結局この事件は何だったのでしょう?
この現象で何が起こったかと言えばネコがきゅうり恐怖症になっただけ。それ以上でもそれ以下でもありませんでした。
現象が止まったのでもうこれ以上どうする事も出来ません。犯人を見つける事も出来ず、犯人を捕まえられないのでその目的も分かりません。謎は残ったままになりました。
きゅうり恐怖症になったネコは今でもきゅうりが恐怖の対象になっています。だから知らない内にネコの側にきゅうりを置くなんて事をしちゃいけませんよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます