ネコがきゅうりに驚く理由
にゃべ♪
短編オムニバス
第1話 ネコは好奇心旺盛な動物です。
ネコは好奇心旺盛な動物です。イギリスには「好奇心は猫を殺す」と言うことわざもあるくらい。この意味は好奇心が旺盛過ぎて触れてはいけない事にまで手を出してしまい、その結果その事で死んでしまったとかそう言う意味だと思います、多分。
ある日ネコが道を歩いていると今までに見た事のない物体を発見しました。それは細長くて緑色のまるできゅうりのような姿をしています。
最初に書きましたがネコは好奇心旺盛な動物です。この突然目の前に現れた未知なる物体にネコが興味を抱かないはずがありません。
最初は恐る恐る……しかし特に危険がない事が分かると速攻でネコはその物体に近付きました。その物体に近付くと早速ジロジロと眺めたりくんかくんか匂いを嗅いだり猫パンチしてみたり……あらゆる角度で確認し、綿密にその物体の調査を続けました。
そしてある結論へと辿り着いたのです。
その結論とは……これは「食べ物である」と言う結論です。ネコの今までの経験からそう結論せざるを得なかったのです。
そうと決まれば次に取るべき行動は決まっています。ネコは商売人ではありませんからこれを売ろうなんて思考に辿り着く訳がありません。そう、この未知なる謎の物体を味覚と言う観点で確認すると言う方法に出たのです。
この時ネコは特にお腹が空いている訳ではなかったのですが、ちょうど都合よく小腹が空いていました。折しも時間は午後三時を迎える辺り――まるで全てがお膳立てされているかのようです。
じゅるり……ネコはあふれだすよだれを抑える事が出来ません。次の瞬間にはもうパクリとその謎の物体にかじりついていました。
「これは!」
謎の物体にかじりついたネコは驚嘆しました。この物体、姿はきゅうりそのものでしたが、きゅうりの味でもなく甘くもなく辛くもなく――そして美味くもありませんでした。そもそも食べられると言う事にまず驚いたのです。
特に美味しい訳でもないその物体でしたが、不思議に癖のある味でネコはその味が嫌いではありませんでした。むしろどちらかと言うと結構好きな味でした。
「何かやめられないにゃ~」
気が付くとネコは謎の物体を夢中になって食べていました。この物体にはネコを夢中にさせる何かが中に入っていたのかも知れません。とは言え、見た目はまるっきりきゅうりなんですけどね。
夢中になって食べていたネコでしたが、流石にこの物体を丸まま全部食べてしまうほどにはお腹は空いていませんでした。
そこでネコは残りを後で食べようと、食べかけのこの物体を家に持って帰ろうと思います。
食べかけの物体を口に咥えて猫は家に帰りました。これはいいものを拾ったにゃとネコは思います。
しかしそれからどれだけたったでしょうか? ネコは急に恐ろしい腹痛に襲われます。
「ああああああああ!」
咥えていた物体を放り出してネコはその場に倒れました。何しろとんでもない痛みです。今まで感じた事のないその痛みは死を覚悟するほどです。
「痛い痛いたいたいたいた痛い痛い……!」
ネコはその場でのたうちまわり、吐くものを吐いては出すものを出しました。やがてその周りでは異臭が立ち込め、半径20mに渡って立入禁止の警報が出される始末です。騒ぎを聞きつけ野次馬は集まるものの、誰もネコに近付く事は出来ませんでした。
そのせいでネコはこの苦痛に一人で立ち向かわなければならなくなりました。
それからどれだけの時間が経った事でしょう。長きに渡る腹痛との格闘の末……ネコは無事その戦闘に勝利したのです。
お腹の中の暴れん坊は退治したものの、その対価としてネコはすっかりヘトヘトになってしまいました。それもまた当然でしょう、この決着を迎えるまでの丸一日ネコは何も食べられなかったのですから。
この腹痛の原因はやはりあの長くて緑色の物体だとネコは思いました。それ以外に腹痛の原因が思い浮かばなかったからです。
正気を取り戻したネコが辺りを見渡した時、その物体はどこにも見当たりませんでした。それはこの出来事がまるで夢か何かだったのかと疑ってしまうようでした。
ただ、自分がやらかした結果はそのまま辺りに飛び散っていたので、これを夢だと言い切るのは不可能でしたが……。
それからと言うもの、ネコはすっかりきゅうりが苦手になってしまいました。きゅうりを見ると腹痛で苦しんだあの記憶が蘇ってしまうのです。
なのでみなさん、どうかネコにきゅうりを見せてびっくりさせないようにしてくださいね。
それと道端に落ちているものに無闇に近付かないように。後で何か起こってもその時はもう手遅れですからね。
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