第47話 撃つ、撃つ、撃つ。切る、切る、切る。
一つだけ最後に聞きたった。異常な思い込みで動いてる博士の側に俺がいたのかどうかを。
「いや。いなかったよ。まあ、会わなかっただけなのか、そもそも僕の世界に君はいないのかはわからないけれどね」
「そう。そうか」
それで安心した。博士の暴走を止めることを他の世界の樹はきっとできるだろう。『樹』がこの戦いに博士を巻き込み博士が俺を巻き込んだ。そして、こいつの元に俺は来た。こいつを止めるのは俺だ! もうこんなことに巻き込まれるのはごめんだ。
俺は銃を抜き博士を狙う。人間なんだという思いはとっくに消え去っている。さっきの会話で十分だろう。引き金を引く。
ズギューン
ドゴーーン
博士は周りの機械と共に吹き飛び天井に当たりすぐに落下した。博士の周りには血が広がっている。真っ赤な血だ。博士は人間だった。なのに……人間を悪だと言い切り、この博士の世界には人間がいなくなったんだ。そして、他の世界まで攻撃を始めた。なんの執念だったんだろうか。自分が生きていてもいいという証だったのかもしれないな。自分も人間なんだから。
そんな事を考えながらも博士の部屋を破壊して行く。何がなんなのかわからない。何一つ残していても危ない気がして……。
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
周りにある機械が音を立てて壊れて行く。
これでいいんだ。こいつと一緒にすべてを葬り去らなくてはいけないんだ。
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
博士の部屋はもう元に形を残してはいない。それでも頑丈に作られているんだろう。まだ、天井が落ちてくることはない。
グサッ
博士とその周りを撃っている間に後ろにいた奴らに背後から狙われたみたいだ。もちろんその可能性は考えていたが博士を殺るのが先だった。逃げられたらこの戦いは終われない。そしてこの部屋も。
お腹を見ると銀色の奴らの腕が見える。俺は三歩前に踏み出して振り返り銃口を向ける。そこには……皮肉だな。俺の血がベッタリと着いた腕の翔子の姿があった。
「翔子……」
翔子の姿をしたそれは話をすることもなく、目を爬虫類のまま瞬きをしただけだった。両腕はもう銀色になっている。
許せない! 翔子は必死に戦って来たんだ。なのにこんな姿にされて……!
銃口を翔子に向ける。
「バイバイ。翔子。楽にさせてあげるよ!」
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
この部屋の入り口付近にいた連中は翔子と共に吹き飛んだ。まだだまだ!
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
すべてを破壊しなければ……俺も何かに取り憑かれているんだろうか。
霞む視界の中で俺はボロボロになったこの部屋から出て行く。瓦礫や元死体だった者たちを踏み越えながら。
翔子の体をどうしようかと迷ったが、刺されたところが響いていて歩いていくのにも苦労しそうだ。仕方ないこのまま行こう。
出口の扉は壊れたのか開きっぱなしだった。瓦礫はそこまでだった。歩きやすい廊下に出た。足を引きずり廊下を歩く。木のドアの前に来た。ここも……全てを消すんだ。
ガチャ
ドアを開けて銃口を向ける。
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
本棚もベットも机もあっという間に崩れ去り瓦礫が広がる部屋となった。
俺は部屋のドアを閉めて、振り返る。ここは奴らがいる部屋だ。容赦なく撃たなければ殺られてしまうだろう。さっき博士の部屋にいたのはほんの少しだ。中の奴らに比べれば……
右手のボタンを左手で押しながら銃口は扉の先を狙っている。いくぞ、いち、にい、さん!
ボタンを押すと静かに扉が開いた。瞬間に俺は引き金を引く。
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ま、まだなのか……?
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
ズギューン
ドゴーーン
気づけば側にも来ている。刀に持ち替えて攻撃をかわして切る。切る。切る。……………
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