G死滅計画

  

  

『G死滅計画

 隙間や通り道に一回噴射するだけでOK』

「こう書いてるだけあってすごいのよ。ここの隙間にね、こうやって一回――」

 商品名のラベルを俺に見せてから、妻が小さなスプレー容器に入った薬液を冷蔵庫の間に噴射する。

「ほらこれだけで隠れているGも通りかかったGもいちころなの」

「ホントか?」

 俺はテーブルに新聞を広げながら鼻で笑った。

「ホントよ。もし今Gが出てきても使えるし、もうこれ一本でいいの。心強いわ。

 あっちこっちの隙間に吹き付けとけば、今年はあの黒くて不気味な姿を見なくていいのよ」

 そう言ってテレビやソファの下、茶箪笥の間までシュッシュッシュッと吹き付けていく。

「おい、においはしないけど、なんか喉がいがらっぽいぞ。やり過ぎは人体によくないんじゃないか?」

 喉の異物感に咳払いしながら妻を見る。

「ん? わたしはどうもないよ。それにやり過ぎはだめだっていう注意書きもないわ」

 だが、俺は返事するどころではなかった。喉の奥がぞろぞろして気分が悪い。

「あなたどうしたの? きゃああっ」

 顔を覗き込んできた妻の悲鳴で自分の口からGが溢れ出しているのに気付いた。ぼたぼたと足元に落ちたGたちが苦しみ悶えている。

 最後の一匹が口から飛び出した途端、俺の意識は途絶えた。


 この殺虫剤により密かに進行していたGの人類乗っ取りは阻止された。

 結果、人口の半分以上が減少。

 また、命拾いした宿主もいるにはいたが、免疫力が低下し、やがて死に至った。

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