「普通の少年」

佐倉七花

第一話「少年は街へ向かう」

【1ページ】


少年は普通に過ごしたかった。



ただ普通に過ごしたかった。



平穏に暮らしたかった。



少年は普通の18歳になった。



18歳になったけれども、

とりわけ身体には変化もなかった。



しかし、少年はたった一つ自分が変化したことに気が付いた。



「普通とは何だ」



少年にとっての「普通」は普通ではなくなった。



「普通」が普通ではない物のように感じられるようになった。



少年にとってそれは残酷な事であった



毎日のように両親から求められ、

答えてきた「普通」が姿を消したのだ。



両親の口癖はこうだった。



「普通に生きなさい。みんなと同じように勉強して、大学に行って、就職しなさい。」



少年は、その言葉を煩わしく感じたことは今までなかった。



今までは



今となっては「普通」の二文字は少年を縛るものでしかない。



縛ると言っても行、精神をわしづかみにするわけではない。



ただ、何か引っかかりが取れないのだ。



少年は「普通」の普通の答えを得るために家を飛び出た。



自分の家族が「普通の家族」ではないと感じたからだ。


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