乙女は砂糖菓子の夢を見る

神崎 瞳子

Sugar me


『今日から

僕のお姫様になってください。』


お洒落な都会の道のど真ん中で

荷物を落とした時に

拾ってくれた人に言われた。


連絡先を書いたメモを渡されたまま

連絡するか迷っている。


『佳凪は頭良いし

こないだミスコン優勝したじゃん?

なんで彼氏いないの?』


私が聞きたい。


私は重度のロマンチストだ。


白馬に乗った


王子様じゃなきゃお断りだもの。


毎日薔薇の花束を持ってきてくれて


私を素敵なところに


エスコートしてくれる。


私の服装を必ず褒めてくれる。


寂しい時には手を握ってくれる。


そんな人がいい。


悩んだ末に連絡をしてみた。

すぐに返信が返ってきた。


『今度会いませんか』


そんな約束を取りつけてみる。

運命の王子様だと信じて。


◇◇◇


『お待たせ』


私が到着する前に

集合場所に居るなんて完璧だ。


成り行きで

カフェに行くことになった。

ここまではよかったのに……


その彼の名前は『佐倉 朋暁』


スタイルも


顔も


声も


完璧。


お付き合いする事を

お受けすると伝えた後に

私に突きつけられた紙。

それは

まるで契約書のようなものだった。


そして彼は口を開いた。


僕の彼……いやお姫様になるなら


毎日ドレスを着て


身体のお手入れを欠かさずして


汚い言葉を使わない。


他の男性とは遊ばず


挨拶はちゃんとして


感謝の気持ちを忘れない。


『できますか?』


『いやそれ先言えよ』


『失格。では帰ります。』


『えっ……ごめんなさいできます。』


内心

初めてこんなに変な人見たと

思いながら

自分がどこまでできるか

試したくなってしまった。


だって私は


容姿端麗


文武両道


街を歩けば


みんなが振り向く


誰もが理想の


『お姫様』


なんだもの。

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乙女は砂糖菓子の夢を見る 神崎 瞳子 @Maybe_Candy_Lady

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