鎮魂歌 ~ 北高レクイエム ~
伊東デイズ
第1話 廃校決定
惨敗だった。
廃校のニュースが駆けめぐったのが九月で、それから戦いの二ヶ月が過ぎた。
たった四十二人の全校生徒の反対運動も今日ですべてが終わった。
教育委員会の最終案に在校生とその父兄の意向はまったく反映されなかった。
「ここ数年の破滅的な財政の悪化から、市の方針としてコンパクトシティを推進して参りました。公共機関並びにインフラを市の中心に集中させ、質の向上と大幅な経費削減を目的としており……」
かつては関西最大の商業港直近のベッドタウンとして栄えた街も、今は衰える一方だ。
市長の苦しまぎれの釈明なんかクソくらえだ。
俺たちの学校は廃校になって、在校生は隣の高校に統合される。なんとあの幸南高校だ。集約が進んだ市内の高校はもう南と北にそれぞれ一校しかなかったから、選択肢は幸南だけだった。これで市内に高校は一校に統合された。
バスケット部に陸上部だけだった我が校だったけど、その最大のライバル校に転入扱いとなるのが、そもそもの反対運動の発端だったのだろう。
市の財政立て直しを公約に掲げた市長の改革は、小中学校を経てこの統合で完了した。
全国で小中学校と高校だけで年に九十校が廃校になっている。だいたい四日に一度は学校のお葬式なわけだ。
その中には甲子園で名を鳴らしたところもあれば、新体操で世界大会に出場した名門もある。
でも……子供の数はあまりにも少なすぎ、学校は多すぎた。
廃校が決まると、中の家具や教材を搬出したあとは捨て置かれる。いまや取り壊しする費用にも事欠くありさまだった。
俺たちの北高校は設立五十年まで残り少し、というところでその使命を終えた。
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