続、満月

風が吹いています

そうね、雲が散っていくわ

月が昇ります

そうね、私を魔女にしてくれるわ

参りますか

そうね、お姫様が待っているわ


小柄な男に手をひかれ

魔女は塔をぐるぐるのぼり

王女の部屋を訪れた


やっぱりきれいな目の色ね

昔々の竹の色

眠らせたまま?

そんなのだめよ

3000回後の満月の夜

あなたのことを目覚めさせるわ

それでいいでしょう

そうしましょう

愚かな王は気付きやしないわ


歌うように囁く魔女に

小さな王女は言葉を返す

抑揚のない幼い声に

少しの期待を織りまぜて


あなたのめもとてもきれいよ

きいろくて

おつきさまみたい

ねぇ

ねぇ

わたし

おきたくないの


魔女は笑った

笑って

嗤って


だめよ

私のために起きてもらうわ


魔女は窓辺に歩みより

月に向かって問いかける


──────私は魔女なのね?

3000回後のあなたに会うまで

可愛いあの子を眠らせる

そんな魔法だってつかえる

─────────そうよね?


ぐら、り

王女の体が傾ぐ


黄金色の瞳の魔女は

白く光る月を眺めて

似ているかしら?

と呟いた










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