2016 3月
こんな夢を見た。
私が頭の重さに任せて椅子に座って俯いていると、机の上の携帯が振動する。手に取ってホームボタンを押すと、何やら分からぬメールアドレスから1通のMAILがきていた。開いて見てみると、それは嘗ての恩師である田沼先生からの暑中見舞いに似た内容のMAILであった。田沼先生は高校の時の現代文の教師であり、芥川や夏目漱石の名著の数々を私に教えてくれた方でもある。現代文に取り扱った夏目漱石の「こころ」の感想文を先生に提出した時だ。私は後日、国語研究室に呼び出され、先生から直々に感想文に対してのコメントを貰った。というのも、大抵が原稿用紙一枚分くらいの感想文だったのに対して、私の感想文はその30倍以上はある量だったからである。先生は文言にてこのように返した。
[君は自分に酔っている。だからこそのこの文章の質であろう。夏目漱石によく似た具体と抽象の往来方法を持っている。弄れた部分もあるが、そこを歪めるべきではないだろう。今後の文章にも期待する。]
完全に退廃し切った大学生活を送っていた私にとって、この文章はあまりにも大きい劣等感を生んだ。嘗ての自分は偉人にもよく似た思想を持ち合わせていたという事だろうか。だとすれば今の自分は完全なる廃人である。
脳内で只管、社会から自分を貶める客観的な劣等感の中で私は髪を掻き毟ることしか出来なかった。
そうして挫折感に打ちひしがれた僕は、誰もいない部屋を一周し、鏡の前に立ち、肥りつつある自分の顔に向かって思い切り頭突きをした。
瞬間、時空がねじ切れたように私は空中へ飛ばされ、浮遊感と謎の恍惚のままに最終的には横たわった。
気が付くと、そこは何処かで見た事があるような水族館の水中に座っていた。
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