第65頁目 ― 25 ― 六号室。仏滅 大安(ぶつめつ だいあん)―

   ― 25 ― 六号室。仏滅 大安(ぶつめつ だいあん)―


 次の日のお昼の12時、六号室のインターフォンを押す。

 すんなりと出てきた、七・三饅頭。

「おらの部屋にようこそ。さあ、入りなさい」

 まあ、何て言おうか。

 洋間に和室は普通に飾りっけも無い部屋。

 ただ、観葉植物が何本か並んでいるのが何気に印象的だった。


 居間のほうも案内される・・・

 居間には、黒のビニール製の足なしソファーと丸いガラステーブル。

 本棚が壁にもたれる様に斜めになっている。

 本棚に膨大な数がズラリと並ぶCDとレコードとアイドル雑誌。

 きっと倒れないように、本棚をわざと壁際に傾けているのだろうか?。

 目を凝らしてみると、重そうに支える台がへこんでいた。

 本棚の横には、CDプレーヤーと、モダンな作りのレコードプレーヤーも完全完備している。


 周りをキョロキョロと観ながら、オレはソファーに座る。

 すると同時に、七・三饅頭が押入れの引きドアを開けてワインを出す・・・

 えっ?

 はぁ?。

 おい!。押入れにワインセラーがあるのかよ!。

 確かに、押入れはどんよりしていて湿気もあり、ワインには最適かもしれない、けど、温度の管理は出来ないから、普通はワインセラーなんぞにはしないだろう!。

 ってか、押入れにワイン置くなよ!。


 押入れから出したワインを笑顔で勧める七・三饅頭。

「まあ、おらの部屋は質素だよ。まぁおらの話しを聞いてから、次の部屋に行きなさい!」

「は、はい。そ、そうします。」

 ただただ、イヤな予感しかしない。

 この世界から早く逃げたい・・・

 グラスに注がれるワインをジッと見つつも、不安ばかりが脳裏を横切る。

 

 ・・・あれから何時間が経っただろうか?

 その間に、ずっと80年代アイドルを細かく説明する七・三饅頭。

 本棚から当時のアイドル雑誌を次々と出して、1ページずつ丁寧に説明を始める。


 そんなアイドル話しや、アイドルの動画を見せられながら、今日の夜が更けていく・・・

 気づいてみれば、午前一時・・・

 確か、昨日のお昼頃に来たような気がする。

 とても聞きたくもない情報が頭の中で迷子になる。

 えっとぉ・・・世の中にアイドルってたくさんいるんだなあ・・・

 けど、誰だかさっぱり覚えてない。

 あれだけ洗脳されて観せられても、まったく覚えてない。


 なんとか疲れて朦朧とオレの部屋に辿りつく・・・

 ・・・そして、倒れて眠るオレだった。

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