第64頁目 ― 24 ― 三号室。保池 命短(ぼちみ こと) ―

   ― 24 ― 三号室。保池 命短(ぼち みこと) ―


 モヒカンガイコツの部屋の前。

 週刊誌を真ん中から開いたような髪形が、実はモヒカンだった保池(ぼち)さん・・・

 オレは、インターフォンをとりあえず押してみる・・・

 ・・・押してから、一分ぐらいジッっと待つ・・・

 ん?。あれ?やっぱり、いないのかな?

 裏のガラクタ・スクラップ置き場にでもいるのかな?


 オレは、いないと思い、六号室に行こうとすると、

 突然、

 ガッ!!

 と、音沙汰おとさたもなしにドアが開いた。

 突然の出来事で、突然開いたドアの角がオレのひたいに突き刺さっていた。

 額からにじみ出てくる血、いや、吹きだしている!。

 ヤバい!。額から吹き出しているぞ!。

 オレはその場にジタバタと転がりながら、額を押さえて痛さを堪える。

 で、でも痛いぞ!痛いぞ!。

 今、突き刺さった瞬間、目の前に星が見えたぞ!。

 オレが激しく痛がっていると、

 ぬも゛~~ーー!

 っと顔を出す、モヒカンガイコツ。

「あっ、大丈夫ですか?。ドア前のだと危ないですよ」

 と心配してくれながらも言ってくれた。

 が、

 もう、遅いわ!。

 痛いわ!

 激痛が激しいわ!

 血が止まらねぇーよぉぉ!。

 凄い激痛が走りながらもオレは、貧血しながらも立ち上がる。

 オレは偶然持っていた絆創膏を額に貼ろうとした・・・が、剥がしたテープの部分がお互いくっついた。

 うわっ!。マジかよ!。

 くっついて剥がれねぇーーよ!。

 ヤバい!これって、粘着同士が引っ張り合って、全く引き離せないパターンじゃねぇかぁ!。

 オレは、諦めて別の絆創膏を取り出す。

 その絆創膏を額に貼ろうとした瞬間、

 あ、あれ?、額がなんか・・・あれ?凹ってしてる・・・

 げっ!も、もしかして縦に少し陥没しているのか?

 ・・・こ、これって、凄いヤバくね?

 その時、オレはおでこって、こんな簡単に陥没する事を知った。

 あれだけの衝撃も加われば、額も陥没するかも知れない。が、まさか本当に陥没するとは、思ってもいなかった。

 

 と、とりあえず、陥没しても、それほど痛さはない。ただ衝撃の時にいくつも星が見えただけだ。

 何度も触っては見るが、縦に窪んでいるのが分かる。

 と、とりあえず気にしないでおこう。

 なんとか、絆創膏を縦に三枚貼り終え、モヒカンガイコツの部屋へと入る。


「あっ。どうぞ。どうぞ。よくいらっしゃいました。」

 いつものジャージスタイルでお迎えをしてくれたモヒカンガイコツ。

 まあ、普段着がジャージスタイルなので仕方がない。


 そして、モヒカンガイコツの手招きで部屋の中へと案内される・・・

 洋間も和室も車の部品がただひたすらに散らばる部屋の中。

 ダイニングキッチンには、冷蔵庫も戸棚も有り、思ったよりも、とてもキレイに整っている。

 ガイコツの割には、全然墓場っぽくない普通の部屋だ。

 居間には、車の雑誌と、24型のテレビにテーブル・・・

 テーブルの上には、質素なお茶が置いてある。

 その周りに散らばる、 車のバンパーにマフラーにホイールにスクーターのエンジンなどなど・・・

 手入れでもしていたのかな?汚れたウェスが無造作に散らばっている。

「モヒカ・・・いや、保池(ぼち)さんって車が好きなんですか?」

「五号室の人。よくぞ聞いてくれました。まあ、そこに座ってください。」

 モヒカンガイコツの指した居間に置かれたテーブル前の座布団にオレは無言で座る。すると同時に、モヒカンガイコツが話し出す。

「私もう42歳なんですけど、もう、車などの乗り物が好きで好きで好きで、

 チューンナップとかするんですよ・・・あっ、ちょっと、お茶でも持ってきますね」

 そう言うと、その場を立ち上がり、流し台へとお茶を注ぎに行く。

 へぇ~~・・・モヒカンガイコツって、42歳だったんだ。初めて知った。

 ほほーーっお茶かぁ。

 お茶なんて、とても質素だ。

 それに、お茶なんて何年ぶりに飲むだろうか?

 うーむ。思い出せない。

 でも、お茶なんて、とても井戸端会議みたいで、良いかも知れない。

 ・・・えっ?井戸端会議?

 え゛っ?

 あっ、も、もしかして、これってとても話しが長くなるのか?

 ヤバい、かなりまずいなあぁ

 年寄りの話しは長いからなぁ

 よ、よし、ここは、すぐに切り上げよう。

 オレは、そう決意する。


 ・・・数分が経ち、モヒカンガイコツが、オレにお茶を持ってきた。

 そして車の話しを再び話し出す・・・

 パーツの話しから、過去に出会った事故の話や、聞きたくもない恋愛の話し。

 そして、いきなり車の本を広げて、車について話し出す。

 や、やっぱり話なげぇなあww

 オレ、車の話し全然興味ないんだけどなぁww

 ってか、早く終われよ!。

 すげーぇ長いじゃねぇーか!。


 確かオレは、怪力モアイゴーレムの部屋には、15分ぐらいしかいなかった。

 そして、モヒカンガイコツの部屋に来たのは・・・

 午後の1時半ぐらいだったと思う。


 長い長い時間が過ぎ・・・

 ・・・やっと、話しが終わって、部屋を後にする。


 時計を見ると、もう午後の11時半。

 ながっ!

 なんだ、この長さは!。

 長すぎて、途中から記憶が無いぞ!。

 でも、ながっ!。

 9時間も話しを聞いていたなんて、そりゃあ疲れるわ!。

 オレは、とても疲れたタメ息を何度もする。

 もう、今日はいいだろう。時間も時間だし、

 あとは、明日にするか ぁ・・・


 モヒカンガイコツが車大好きなのは、よく判ったし、話し好きなのもよく判った。

 ただの孤独の話したがりとも取れるような話し方だった。

 ・・・無理も無いか?42年間も独りで、独身なんだから。

 42年も彼女無しの童貞だと言う話しもあった。

 それぐらいに趣味に熱中しているモヒカンガイコツを尊敬はしたいと思う。

 だけど、オレはせめて彼女を作りたいし、早くエッチもしたい!。

 いや、オレは早く童貞を無くしたい!。

 あの、真菜美さんを絶対にゲットするんだ!。

 オレの思いは、股間も将来の夢も大きくなっていた。


 そんな思い?野望?を持ちながらも、オレは自分の部屋に戻る・・・

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