第66話 設計したやつ出てこい!

 今までの工場は、屋根にトタンを使っていて、現場に機会を持ってきて加工するというのは、前に書きましたが、今回は違います。

 工場の中に熱がこもる仕様なので、屋根やトタンではなくスレート板。しかも熱が逃げるように三角屋根のてっぺんには空気が逃げるように換気口がついています。おまけにスムーズに熱気がそこにいくように屋根は急勾配。

 今回も設計施工で、設計は外注という仕様ですが、設計者はとうぜん、今書かれたことを考慮して設計すべきでした。


 はい。設計者、そんなことをこれっぽっちも考慮しておりません。

(人のことはいえません。私もそんなこと一ミリたりとも考えてませんでした)


 その結果がなにが起ったか?


 はい。屋根の根太に使っていた鉄の部材(Cチャンとかチャンネルとか呼ばれているやつです)が、スレートの重みに耐えきれず、たわんじまった。


 マジかよ!


 これはまずい。どう考えてもまずい。なにせ中から天井を見上げれば、重さで曲がった鉄の部材が丸見え。

 それ以前に構造的にやばいでしょ?

 まさに、設計者出てこいっ。ってやつです。


「どうするトト?」

「補強しましょう」


 こうして、いったん途中まで取り付けた屋根をいったんぜんぶ外し、チャンネルを要所要所ダブルにする。さらに一番上の左右の根太をそれぞれアングル(L型鋼)で溶接して補強。


「だいじょうぶかな、これで?」

「だいじょうぶでしょう」


 はっきりいって根拠はない。勘です。


 しかし、結果的にはうまくいきました。

 このあと、屋根を取り付けても、こんどは下がったりはしない。


「ほっとした。だけど、屋根屋と鉄骨屋には余計な仕事させちまったな。請求してくるかな?」

「だいじょうぶでしょう」


 ほんとか? ほんとか?

 日本だったらぜったい請求してくるぞ。っていうか、追加もらえないなら、やらないっていうぞ。


 とはいえ、あとで「追加請求来ましたけど、どうしましょう?」という相談は受けなかったので、トトがなんとかしてくれたんだろう。


 すみません。あのときの鉄骨屋さんと屋根屋さん。

 図面書いたやつ、死ね。

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