第52話 南野、プロカメラマンになる?

 私は趣味でずっと水中写真をやっていましたが、その写真を使わせてくれという申し出がありました。

 我が社のダイビングクラブ(ってことでいいよね、もう)がお世話になっている、セブ島最南端リゾートのオーナー、Tさんからです。


 おう、なんかプロカメラマンになった気分じゃのう。


 と、私はちょっといい気になっておりました。

 まあ、たぶんプロに金払うのはもったいないし、客で写真本格的にやってるのは、自分くらいだから白羽の矢がたったんでしょう。


 私の腕前はプロ並みとはいえなくても、機材はプロと同等品です。

 釣りバカの浜ちゃん扱いされつつも、持ってきてよかったよかった。


 で、うちのリゾート使うと、こんな海に潜れるよ。どやっ!


 っていうような、写真がほしいらしいです。

 できれば、そこが使う代表的なポイントで、一枚ずつ、なんかすげえ写真があればいいと。


 まずスミロン。ここは並んで泳ぎながらとった、バラクーダの編隊。これで決まり!


 アポ。浅瀬の珊瑚礁をびゅんびゅん回ってくるギンガメアジの群れ。これもいい!


 バリカサグ。深場のドロップオフ(海の中の崖ですね)に根付くギンガメアジの大群(これはもうちょいいい写真があればよかった)。


 で、リゾート前のハウスリーフ。

 ここはそんな大物が根付いたり、回遊してくるようなところではないのですが、私はたまたまここでマンタ(知ってますよね、あのでかいエイです)に遭遇してます。

 しかも向こうからやってきたマンタと思わずぶつかりそうになり、あっちが上に逃げた瞬間をばっちり写真に収めてます。


 おお、我ながらすげえ!(ええ、自画自賛しますが、なにか?)


 これらを送って、後からできあがったパンフレットを見せてもらいましたが、けっこういい出来です。

 Tさんも喜んでくれました。


 ただ、あの写真を見たお客さんが、「このマンタのポイント行きたい」といったとき、どうするんだろう?

「ここだよう」とリゾートのハウスリーフをビーチエントリーして潜ったはいいけど、マンタなんかでねえじゃねえかと、怒られないだろうか?


 まあ、嘘をついたわけじゃないので、後は知らない。


 ちなみにギャラはもらえませんでした。

 もらっていれば、プロカメラマンになったと言い張れたのに(フリーのプロカメラマンなんて、言ったものがちですから)。

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