第51話 南野、ローカルスタッフに嫌われる

 日本人スタッフは、だいたい現地のエンジニアたちとはうまくやってます。

 癖のある人物が多いですが、意外とフィリピン人に対して偏見をもっていないのばかりかも。

 あのSさんもフィリピン人とはうまくやってますし、Iさんとて、言葉が通じないだけで、彼らを嫌っているわけでもない。


 まあ、K君がローカル責任者ともめたという噂は聞きました。

 彼は23歳くらいの若造のくせに、言いたいことを言いますから(まあ、日本人にもけっこう遠慮がないけど)。


 私はといえば、まあうまくやってきたんですが、ある事件が起りました。


 監理者とIさん、私が現場で打ち合わせをしているとき、突如停電になりました。

 エリア全体じゃありません。現場の中だけです。

 私はエンジニアたちに怒った。


 いや、べつに本気で腹が立ったわけじゃないんですよ。ただ、監理者の手前、ポーズで怒ってみただけです。

 なにせIさんときたら、例によって、

「ライト、ノーだぁあああ~っ!」

 とか叫んでるだけですから。


 そのうち電気はつきました。

 それで丸く収まったかに思えました。しか~し、じつはそうではなかった。


 監理者が帰った後、エンジニアのひとりが

「さっきのことを説明させてくれ」

 と直訴してきました。


 私はあまり取り合いませんでした。

 べつに本気で怒ったわけじゃないからとアピールしたつもりでしたが、どうもそれがよくなかったらしい。


「我々は悪くないってことを説明したいのに、この男は聞いてくれない」


 どうやらそう思ったようです。


 めんどくせえ!


 とはいえ、この件はすこし反省しました。

「わかった。説明して見ろ」

 そういって耳を傾け、うんうんうなずいてやればよかった。

 そうすれば、

「ああ、この人はなんて話のわかる人だ」

 と一目置かれたこと必至だったのに。


 あるいはちゃんとフォローしてやればよかった。

「あれは監理者の手前怒って見せただけだ。俺が怒ったから、監理者は怒らなかったんだが、悪かったな」みたいに。


 まあ、次に生かしましょう。


 もっとも、Iさんはたぶんなにが起ったのか理解してないと思うけど……。

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