第10話 昼食は優雅にクラブハウスで

 こっちでの飯事情はどうなっていたか?

 朝と夕ご飯は寮でメイドさんが作ってくれます。しょうじき、どんなものが出ていたのか、あまり記憶にないのですが、それはつまり無難なものが出ていたということでしょう。たぶん、現地料理でもなく、無理に日本ぽくしたものでもなく、洋風のものが出ていたんだと思います。ただ、ご飯だけは日本米だったのは記憶してます。(現地米はちょっと細長く、ぱさぱさした感じです)

 ちなみにデザートにはよくマンゴーが出ていました。


 問題は昼飯です。

 マカティの事務所にいるときは、まわりに日本食を含むいろんなレストランがあって、食べるところに困らないのですが、現場のまわりにはなにもありません。

 現場のキャンティーンで食べるというのが、もっとも簡単な方法なのですが、M籐さんとN君には、それははじめから選択肢としてないようです。


 まあ、たしかにご飯は現地米だし、まわりにハエが飛んでたりするしな!


 ということで、昼は車を出して近くの街まで行きました。とはいえ、すぐ近くにあるのはたいした大きさの街ではありません。

 そこにあったのは、「ジョリビー」。聞いたこともないハンバーガーショップ。たぶんフィリピン限定ブランドでしょう。

 いえ、とくにこれといったハプニングは起りません。普通のハンバーガー屋です。

 とはいえ、毎日それだと飽きてきます。

 そこで出てきた案というのが……。


「そうだ、ゴルフ場で飯を食おう」


 近くに大きな街はなくても、ゴルフ場はなぜかある。

 ということで、昼に車でゴルフ場に乗り付け、クラブハウスで飯を食って出て行くという画期的なコースができました。


 しばらくはこれが続いたのですが、ある日、注文を間違えたか、忘れたかしたウエイトレスに対して、私が怒ってしまいました。怒鳴りつけたわけではないのですが、ちょっと不機嫌に苦情をいった感じ。


 次の日、ゴルフ場に行くと、支配人が言いました。

「すみません。このクラブハウスはプレイをする人たち専用のものなので、それ以外の方はご遠慮ください」


 え、ひょっとして俺のせい?


 あるいはほんとうに会員の人が「作業着の連中が目障りだから追い出せ」と言ったのかもしれませんが、真相は藪の中。


 まあいいさ。俺たちにはジョリビーがあるさっ!(とほほ)

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